不当解雇を理由として労働基準監督署に訴えられる?~不当解雇と違法な解雇の違い?

非常に多くの方が誤解してらっしゃいますが、
今回は不当解雇について書かせていただきます。

例えば、業務命令違反を繰り返したりして
(問題社員だとして)解雇された場合や、
能力不足を理由として解雇された場合に

「不当解雇だ。労働基準監督署に訴える」
という従業員の方がけっこういらっしゃいます。

不当解雇はみとめられません。

そもそも、能力不足による解雇は
中々認められるものではありません。

しかし、それは、労働基準監督署に
訴えるものではありません。

最終的には民事の裁判で争うことであって、
労働基準監督署に訴える問題ではないのです。

労働基準監督署は労働基準法に違反した場合に
取り締まる機関ですが、

実は、不当解雇であるかどうかの判断基準は
労基法にはありません。

その判断基準が労働基準法その他の取締法にない以上、
労働基準監督署は取り締まることができません

 

したがって、民事の問題として裁判で争う問題
(契約の問題)になるのです。

ただ、法律で解雇が禁止されている場合がありますので、
この点はご注意ください。

解雇が法律で禁止されている場合

労働基準法19条の解雇制限が代表的な例ですね。

労働基準法第19条 (解雇制限)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。

その他にも、例えば、以下の解雇が労基法で禁止されています。

・従業員の国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇(労働基準法3条)
・従業員が監督機関に申告したことを理由とする解雇(労働基準法104条)

その他にも以下の法律で解雇を禁止している場合があります。

男女雇用機会均等法
育児・介護休業法
パートタイム労働法
労働組合法
個別労働紛争解決促進法

これらは法律で禁止されているので、
当事者の間で争う話ではありません。

「国家が許さない」

言葉は強いですが、
そのようなものになります。

しかし、法律で解雇が禁止されていない場合に、
その解雇が不当かどうかの基準は
労働基準法にはありません。

あくまでも不当解雇であって、
違法解雇ではないのです。
不当と違法は違います。

解雇が不当であるか否かは誰が判断するのか?

解雇について不当か否かは最終的には
民事の裁判で裁判所が判断を行います。

その際の法律条文は民事の法律である労働契約法に定めがあります。

労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

ここを混乱している方
がいらっしゃいますので、
間違えないようにしてください。

なお、就業規則にどのような場合に
解雇になるのかを詳細に記載しておくことが
重要なのは言うまでもありません。

就業規則に記載のない事由での解雇は
原則として認められないと思っておいてください。

就業規則は従業員全体と会社の契約書です。

解雇が契約の問題だとすると、
契約書である就業規則に「契約解消の事由」
として定められていない理由では
解雇できないのは当然ではないですか?

この部分の記載が非常に
簡素な会社様が多いです。

ただ、誤解しないでいただきたいことがあります。

解雇を行うためには、
就業規則に解雇の事由の記載があるのが大前提ですが、
就業規則に記載があるからといって、
些細な理由で解雇は認められません。

裁判所が解雇を認めるハードルは非常に高いです。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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