中小企業(小規模の会社)用の就業規則とは?

中小企業、小規模の会社用の就業規則ってあるのですか?

よく、そう聞かれます。

私はそのようなご質問に対して
次のようにお答えするようにしています。

「中小企業用の就業規則という言葉
に惑わされずに、

何のために就業規則を作成するかを
まずは考えてみてください。」

本当に大切なことなので詳しく解説します。

そもそも、就業規則とは何かをお考えください!

就業規則は主に以下のことを記載します。

➀社員が守るべきルール
➁労働時間・休憩・休日、休職、賃金などの労働条件

この2つを記載するものが就業規則です。

そうであれば、会社の規模よりも
➀も➁を会社としてどうしていいきたいのか
が大切になるはずです。

『➀社員が守るべきルール』を考える際、会社の規模よりも大切なものはないでしょうか?

社員が守るべきルールを定める際、
会社の規模よりも業種、会社の状況、社風
などの方が重要ではないですか?

確かに、社長が社員一人ずつに指示を出す
(ことが可能な)10人程度の会社と

社長が社員一人ずつに指示を出すことなく、
間に何人もの管理職がいる大企業では
ルール自体が変わってくるでしょう。

しかし、それと同じく、業種等によるルールの違いも大切です。

例えば、以下を比較してください。

・機密情報等の取扱いを詳細に記載しないといけないIT企業
・事故等のないようにルールを明確にしないといけない建設業

会社の規模の違いと同じく、両者で大きな違いが生じます。

『➁労働条件』は、企業規模よりも御社がどうしたいのか方がはるかに重要です

確かに、会社の状況によっては
退職金や賞与を支払うことを
約束できないかもしれません。

休日も大企業並に与えるのは
難しいかもしれません。

そもそも、完全週休二日制自体が難しい会社もあるでしょう。

その場合は変形労働時間制などの導入がいるでしょう。

ギリギリの人数で業務を行っているのであれば、
休職期間が1年なんて無理でしょう。

そもそも休職制度自体を設けられないかもしれません。

定年も65歳なんて無理という会社も多いでしょう。

しかし、逆に、大企業以上に休日を与えるという会社も
たくさんあります。

休職制度だって同じです。

社員が会社に戻ってこれるのであれば1年程度は待ちます。

そういう会社もあります。

定年も65歳などと言わず社員が望むならいつまでいてくれても良い
という会社もあるでしょう。

まずは、どのような会社にしたいのかが
先にあるはずです。

就業規則は社員が守るべき規則や労働条件を記載して
会社と従業員との契約の内容にするものです。

したがって、中小企業用だとか大企業用だとか
そういう言葉に惑わされずに、

どのような会社にしたいかを考えていただき、
規程を作成する必要があるのです。

就業規則とは、御社の労働条件や規則を
書面化したものに過ぎません。

この過程を経ることなく作成すると
会社が全く欲していない内容の
『使えない就業規則』になります。

結局、書類だけをつくって終わり・・

そんな状況になります。

業種、小規模事業場の特例をご存知ですか?

ただし、企業規模によって法律の特例や猶予等があります。

その特例や猶予を選択するか否かは御社のご判断ですが、
法律の特例や猶予等の存在だけは抑えておく必要はあります。

わざわざ、国が業種や会社の規模を
限定して特例等を設けているのです。

知っていて自社では適用しない(行わない)のと、
そもそも知らないのでは全く違います。

特例を選択するのであれば、
それを踏まえた就業規則にすることが必要です。

特例・猶予について一つだけご紹介します。

中小企業(業種限定)の特例(労働時間の特例)

通常は週の法定労働時間は40時間です。

しかし、従業員数が10人未満の飲食業・クリニック
などは他の業種に比べて週4時間多く働かせても
時間外割増賃金の支払いは不要という特例があります。

それらを踏まえたシフトを組むことが必要になってきます。

業種、従業員数を限定したうえでの特例です。

中小企業の適用猶予(労働基準法37条1項後段適用の猶予)

現在、大企業は月60時間を超えたら時間外割増賃金は1.5です。

しかし、時間外労働が月60時間を超えても中小企業は
2023年4月1日までは、1.25の割増賃金の支払いのみでかまいませんでした。

中小企業には猶予期間があったからです。

注 1か月60時間を超える法定時間外労働に対して、
使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を払うことが猶予される
中小企業は以下の通りでした(労働基準法138条)。

➀資本金の額または出資の総額が
・小売業 5000万円以下
・サービス業 5000万円以下
・卸売業 1億円以下
・その他 3億円以下
又は、
➁常時使用する労働者数(企業全体)
・小売業 50人以下
・サービス業 100人以下
・卸売業 100人以下
・その他 300人以下

なお、猶予は除外と違いますので特例はいずれなくなります。

大企業が5割になったのは2010年4月1日です。
中小企業に適用になったのは改正法の施行から13年後です。

適用猶予と適用除外の違いは以下の記事をお読みください。
適用除外と適用猶予の違い~わかりやすく説明します!

なぜ、多くの会社が自社に適用になる特例をご存じないのか?

会社の規模に応じた特例が多く存在します。

ぜひ、自社に関係のある特例の存在は
知っておいていただきたいです。

しかし、自社に当てはまる特例を全てご存じ
という方は非常に少ないです。

適応猶予は多くの方がご存じですが、
適用除外の方は知られていないことが多いです。

これほど、多くの情報がインターネット上に
あふれかえっているにもかかわらずです。

なぜでしょうか?

理由は明確です。

ほとんどの場合、インターネット上の情報
には検索でたどり着きます。

しかし、そもそも、存在を知らないこと
については検索しようがないからです。

人事労務の問題に限りませんよね。

全てに当てはまります。

例えば、ホームページに訪れた方の動向を
レコーディングするサービスがあるのをご存じでしょうか?

そのようなサービスを提供している会社があっても、
その存在を知らなければ検索しようがありません。

その結果、情報にたどり着けないのです。

結局、信用できる人に聞いてしまうのが1番。

そんな時代になったのかもしれません。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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