労働基準法

労使協定とは何か~就業規則との違いをご説明できますか?

労使協定とは何かご存じでしょうか?

就業規則を作成する際によく出てくる言葉ですよね。

就業規則との違いも含めてご説明いたします。
労働基準法で様々な規制を設けていますが、

「従業員が良いというならば、
例外を設けても良いのではないか?」

そういうものってありそうではないですか?

そもそも、労働基準法は労働者を
保護するためのものですから、

労働者が良いと言っているのにもかかわらず、
規制を加えたら却って労働者に不利益
になってしまう場面も想定されます。

そこで、従業員が良いというのであれば
『労働基準法の原則に対する例外』
というものを法律自体が認めています。

就業規則は法律の範囲内で
会社が定めるルールなのに対して、

労使協定は労働基準法の原則
に対する例外を認めてもらう
ための書類なのです。

しかし、「従業員が良いというなら何でも良い」
というわけではありません。

労働基準法では十数個に限った例外です。

その十数個は労働基準法に
手続等も詳細に決められています。

しかし、従業員全員の同意は必要ではなく、
「全従業員の過半数を代表する者」
との協定があれば良いことになっています。

(なお、労働組合の話は除きます。)

そして、口頭ではだめで
書面による協定が必要です。

それを労使協定と言います。

言葉は正確性に欠けていますが、
わかりやすくするために
あえてくだけた説明しています。

イメージとしてとらえてください。

なお、労使協定の中には労働基準監督署に提出する必要のある書類
とその必要のない書類があります。

労働基準法で定める十数個の労使協定の一覧が以下です。

労使協定一覧

・任意貯金 (労働基準法18条2項)
・賃金の一部控除 (労働基準法24条1項)
・1か月単位の変形労働時間制 (労働基準法 32条の2)
・フレックスタイム制 (労働基準法32条の3)
・1年単位の変形労働時間制 (労働基準法32条の4)
・1週間単位の非定型的変形労働時間制 (労働基準法32条の5)
・一斉休憩の適用除外 (労働基準法34条2項)
・時間外・休日労働協定(36協定) (労働基準法36条)
・割増賃金の代替休暇 (労働基準法37条3項)
・事業場外労働によるみなし労働時間制 (労働基準法38条の2第2項)
・専門業務型裁量労働制 (労働基準法38条の3)
・時間単位年次有給休暇 (労働基準法39条4項)
・年次有給休暇の計画的付与 (労働基準法39条6項)
・年次有給休暇中の賃金 (労働基準法39条7項)

これしかありません。
あっ、そうそう育児介護休業法など
他の法律で定められている
労使協定もあります。

そして、あえて色分けをしてみました。

お気づきでしょうか?

賃金労働時間(年次有給)休暇・休業に関するものが
ほとんどですね。

その理由については、ご自身で考えてみて下さい。

労使協定は、従業員の代表者と書面で協定をすれば、
労働基準法の原則に対する例外を認める
というものですから、

全ての労使協定がどのようなものであり、
どのようなときに結ぶ必要があるのかぐらいは
おさえておきましょう。

1個1個の労使協定については調べれば
ご理解いただけると思います。

ここで、大切なのは「労使協定とはどういうものか」
という理解です。

これを押さえていないことには
いくら知識を詰め込んでも意味がありません。

なお、これは余談ですが、
上記条文に「第32条の2」などと「の」
ってありますよね。

この「の2」はどういう意味でしょうか?
32条第2項とは違います。
33条という意味でもありません。

これは、法改正により条文が新たに追加
された場合に起きることです。

32条の後に新たに条文を追加したいとき
33条としてしまうと、

今まであった33条が34条となり、
34条が35条となり、・・
と全ての条文が1条ずつずれてしまいます。

それは、困りますので32条の2
として今までの32条と33条の間
に入れることにしているのです。

ワンポイント知識としておさえておいたいただく
と応用が効くのではないかと思います。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

関連記事(上記労使協定について詳しく解説しています)
年次有給休暇の計画的付与をご存知ですか?
裁量労働制とは何ですか?
1年単位の変形労働時間制と就業規則 ~休日数を最も少なくすることができる制度
36協定〜時間外・休日労働協定

就業規則を提出する際に必要になる従業員代表の意見書とは?

就業規則作成して労働基準監督署に届け出る際に
従業員の過半数代表者の意見書も
提出しないといけないことになっています。

この意見書について誤解してらっしゃる方が
多いようですのでご説明させていただきます。

意見書については、労働基準法90条に
就業規則の作成手続として規定があります。

労働基準法90条(作成の手続)
➀使用者は、就業規則の作成又は、変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を組織する者の意見を聴かなければならない。
➁使用者は、前条の規定により届出[就業規則の届出]をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

就業規則を作成、又は変更した際には、
従業員代表の「意見を記した書面」(労働基準法90条2項)を
添付して提出することが求められています。

これを一般的に「意見書」と呼ばれます。

ポイントは、従業員の「同意」が求められているわけではなく、
「意見を聴かなければならない」となっている点です。

つまり、従業員の代表者の意見書を添付した際に、

「反対します」
「ルールが厳しすぎます」
「退職金制度を設けてほしいです」

等の反対意見が書かれた意見書を提出したとしても
法的には問題はないということです。

労働基準監督署で受け付けてくれない
なんてことはありません。

法律で「意見を聴けばよい」となっていること
を不思議に思われる方が多いようです。

その理由は、そもそも、就業規則(会社のルール)は
会社が作成するものだからです。

労働基準法89条に就業規則の作成・届出義務の条文があります。
ご覧ください。

労働基準法89条(作成及び届出の義務)
使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

作成しなければならない主語は使用者となっていますよね。

つまり、就業規則を作成・変更するのは会社であって、
その作成の手続として従業員の代表に意見を
聴かなければならないという流れになっているのです。

なお、就業規則は会社が作成するものですが、
その内容を従業員に不利益に変更する場合には
従業員の同意が必要になってくることがあります。

しかし、労働基準法には、就業規則を従業員の不利益に
変更してはいけないという条文はないので、
それは、最終的には民事の裁判で争う問題です。
就業規則の不利益変更については以下の記事を合わせてお読みください。
従業員の労働条件を就業規則で従業員の不利益に変更することはできるのか?
最後まで、お読みいただきありがとうございました。

関連記事
労働者の同意を得ても無効なこと
就業規則の従業員説明会とは何ですか?

IT企業の就業規則~裁量労働制、休職制度、職場復帰プログラム

業種ごとに働き方は変わってきますよね。
IT企業には特有の問題があります。

私の事務所はIT企業からの就業規則作成
のご依頼が非常に多いです。

一番はシステムエンジニア
がいらっしゃることですね。

システムエンジニアを雇用している
IT企業では専門業務型裁量労働制を
採用することが多いです。

専門業務型裁量労働制は
採用することができる業種
が法律で定められています。

そのうちの一つの業種が
システムエンジニアです。

裁量労働制は何時間働こうが
「労使協定で定めた時間働いたものもみなす」
ことができると労働基準法で認められた制度です。

専門業務型裁量であるということになれば、
実際に何時間働いたかにかかわらず、

労使協定で定められた時間を
働いたものとみなすことができます。

年俸制は会社にとって
良いことはない制度なので、
お勧めしておりませんが、

この専門業務型裁量労働制を
採用するのであれば、

年俸制も意味のある制度に
なってきます。

なぜなら、賃金を年額で決めることが
可能になるからです。

しかし、きちんと運用をしていないと
そもそも専門業務型裁量労働制とは認められず、

実際に働いた時間分の残業代を
請求されたりしますのでご注意ください。

何らかの理由で専門業務型裁量労働制を
導入したくないというIT企業でも、

代わりに他の制度を導入したい
という会社も多いです。

そうすると、やっぱり就業規則等の整備
が必要になってきますので、

「複雑なので専門家に頼もう」
ということになるようです。

また、普段、会社のシステムを
つくっていらっしゃるので、

就業規則という会社の制度・ルールも
きちんと整備するということが当たり前
というお考えになるのかもしれません。

また、パソコンに向かって仕事をするので、
メンタルヘルスの問題が他の業種に比べて
圧倒的に多いです。

私は医師でもなければ
カウンセラーでもありません。

メンタルヘルスに関しては
会社の制度を整備することが仕事になります。

具体的には休職・復職制度ですね。

休職・復職制度の整備も必要ですので
依頼をよく受けます。

復職する際の職場復帰プログラム
などの制度を作りたいというご依頼もあります。

ただ、同業者の知人・友人に聞いてみても、
IT企業が特に多いというわけでもないようので、
当事務所の特徴なのかもしれませんね。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。
年俸制のデメリット~ほとんどの人が知らない年俸制の怖い話

労働条件通知書は仕方なく交付するものではありません

労働条件通知書を交付していらっしゃるでしょうか?

労働条件の明示は労働基準法上求められていますので
労働条件通知書は公布していらっしゃると思います。

しかし、私は、仮に、法律上
求められていなかったとしても、
会社を守るために公布した方が良い
と思っています。

口頭での約束はのちに「言った」「言わない」
のトラブルの原因になるからです。

そもそも、入社時の口約束なんて
覚えている方の方が凄いと思います。

それが5年前、10年前で
あったらなおさらです。

ですから、労働基準法で求められているから
仕方なく労働条件通知書を交付する
という消極的な理由からではなく、

トラブルを避けるという観点からも、
ぜひ労働条件通知書を
交付していただきたいのです。

就業規則と同じです。
なぜ、就業規則は会社を守るものと言えるのか? ~会社を守る就業規則とは

最後まで、お読みいただき狩りが当ございました。<

労働者の同意を得ても無効なこと

ブログを書いていていつも思うことですが、
私はわかりやすさを優先しています。

内容は多少正確性を欠いた表現に
なっている部分もあります。

その点はご了解ください。

ところで、就業規則・労働者との(雇用)契約には

・労働者の同意を得ても無効なことと

・労働者が同意してくれれば有効なこと

この2種類があるのをご存じでしょうか?

労働基準法を初めとした労働法には
労働者が同意しても駄目なことが
主に書いてあります。

労働者が同意しても(許しても)
国が許さん!

そんな感じの法律ですね。

例えば、残業代。

残業代は支払いません。

このような契約は労働者が同意していても無効です。

支払わないといけなくなります。

しかし、無効になるだけではありません。

残業代を支払わないと場合によっては
刑罰をもって処罰されることがあります

しかし、労働者が同意してくれさえすれば、
許されることもたくさんあります。

いわゆる民事に関する部分ですね。

その辺の区別はやはり労働法に精通した
専門家でないとつかないかもしれません。

また、民法、特に契約法に関する部分
の知識も必要になります。

しかし、例えば、基本給30万円のうち
〇万円をあらかじめ残業代として支払うのは
一定の要件を満たせば認められます。

労働者の同意があっても
認められないことなのか?

労働者の同意があれば
認められることなのか?

ここをきちんと踏まえる必要があります。

なお、先ほどのいわゆる定額残業代のお話ですが、
これは民事のお話になります。

なぜ、これが民事のお話で、
きちんとした要件を満たせば
有効なのでしょうか?

きちんと理解をしておきましょう。

そうでないと、従業員の方にも
適切なご説明ができません。

応用もききません。

大切なのは結論ではなく理由です。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

就業規則は労働者を保護するために作成するものではありません

就業規則は労働者を保護するために
作成するものではありません。

では、なぜ、就業規則(会社規程)
は労働者を守るものという誤解が
生じてしまうのでしょうか?

それは、労働基準法89条で
「従業員が10人以上になったら
就業規則を作成しなければいけない」
と義務になっているからでしょう。

労働基準法は労働者を守る
ためのものです。

これは疑いがない事実です。

そのような立法趣旨の法律です。

労働者を保護する目的で作成された法律に
就業規則の作成は義務として記載されていれば、

確かに、就業規則は労働者を保護するもの
という誤解を生みますよね。

しかし、就業規則は労働者を守るためのもの
というのは違います。

10人以上になると
労使のトラブルが生じ始めます。

しかし、就業規則という会社の決まり事があれば
労使の争いの多くは防げます。

そこで、労働基準法では
就業規則を作成しなければならない
と定められているのです。

労使間でトラブルになって困るのは
従業員だけではなく経営者も同じです。

つまり、『会社全体』のことを思ってのことなのです。
私はそう思っております。

決して従業員を守るためだけに
設けられた法律の条文ではありません。

したがって、就業規則も労働者を
守るために作成するわけでもありません。

それは、就業規則は会社が作成できる
ことになっていることからもわかる
と思います。

就業規則の作成権者は会社なのです。

もし従業員のために作成するものであれば、
従業員の代表者の意見を聞けば足りる
となっているはずはありません。

就業規則の作成について
従業員の同意が求められるはずです。

違うでしょうか?

最後まで、お読みいただきありがとうございました。