労使協定は事業場単位で作成し提出します! ~会社単位ではありません

労使協定を提出する単位について
けっこう誤解をされている会社様が多いようですが、
労使協定は会社単位で提出すればよいわけではありません。

労使協定は事業所ごとに作成し提出します。

ご存知だったでしょうか?

では、事業所とは何だという疑問が生じますよね。

事業所の定義が問題になります。

これは、必ずしも支店、支社、工場等を指すわけではありません。

一つの事業所であるかどうかは、原則として、
同一の場所で行われているかどうかで判断します。

例えば、建設業の工事現場

工事現場は建物が立つまでという期間限定ですが、
本社とは別の場所にあります。

したがって、原則として、
本社とは別に労使協定(例えば、36協定)
を締結し届け出る必要が出てくるということです。

新店舗を開店する場合も同様です。

店舗を開店したらその店舗ごとに
労使協定を結ぶ必要があるということです。

もちろん、本社とは別に店舗がある場合も同様です。

これが大原則です。

しかし、事業場の単位は同一の場所かどうか
だけでは決定されません。

例外が2つあります。

労使協定を同一の場所かどうかで判断しない例外2つ

同一の場所にあっても別個の独立した一つの事業される例外

場所的に分散していても、一つの事業という程度の独立性がないものは
直近上位と一括して一つの事業として取り扱う例外

例外としてこの2つがあります。

これだけでは、よくわからないと思いますので
詳しく解説していきます。

➀の例外については以下の通達をご覧ください。

同一の場所であっても、労働の態様が著しく異なっている部門がある場合に、その部門が主たる部門との連携において従事労働者、労務管理等が明確に区分され、かつ、主たる部門と切り離して法の適用を定めることが適当でないと認められるときはその事業は独立した一つの事業と考えられる(H.11.3.31基発168号)

例えば、清酒製造業の醸造部門と壜詰部門などが
同一の場所にあったとしても別個の事業として取り扱われています。

同じ場所にあったとしても両者では労務管理
や時間外労働の時間数など全く異なってきますよね。

たまたま同じ場所にあるというだけで、
一緒に考えるのはおかしいので
独立した一つの事業と考えます。

➁の例外については、以下を総合して事業場の単位を考えます。

従業員規模、労働者及び労務管理の区分の有無、
組織的関連ないし事務処理能力等

これらを総合して考えるので一概には言えません。

当事務所では労使協定の作成・提出を行う際に
この事業場をどうとらえるのかをクライアント企業様と一緒に考えますが、
本当に判断が難しい場合もたくさんあります。

なお、➁については通達が出ています。

例えば、1人しかいない新聞社の通信部が直近上位と一括して
一つの事情として取り扱うことが認められています。

新聞社の例が通達により事業場に該当しないとされた理由は以下の通りです。

新聞社の地方通信機関は本社の指揮命令の下、取材をし、記事を書き、それを本社に送る拠点に過ぎず、その機関の長は人事権もなく事務も取り扱わず、したがってそれらの機関は組織的関連ないし事務能力の点より一つの事業という程度の独立性を持たないものは本社に一括して一つの事業として取り扱うこと(S.23.5.20基発799号)

一人という人数が重要なのではありません。

この通達を基準にお考えください。

支店や支社などについてはあまり判断に悩むことはないのでしょうが、
例えば、建設会社などでは、建設現場が事業場に当たるか否か判断に悩み
労使協定(36協定等)を提出してこなかった会社もあるのではないでしょうか?

そもそも、建設現場が事業所にあたれば
労使協定(36協定等)を提出しなければならない
ということ自体をご存じない方もいらっしゃったかもしれません。

なぜ、事業場単位で締結するのか?その理由

ちなみに、なぜ、事業場単位で考えるかについてですが、
事業場が違えば、当然、残業時間も違いますよね。

同じ会社でも残業がゼロの事業場もあれば、
平均40時間の事業場だってあるはずです。

そして、その実情を知っているのは
各事業場で働いている人のはずです。

残業以外の労働の実態も同じです。

そういう理由から事業場単位となっているのです。

法律ができるからには全てには理由があり、
全てにおいて本質的理解が大切なのです。

もし、今まで事業場について考えてなかったのなら・・

労使協定の提出のみならず、労働基準法は事業場単位で考えます。

例えば、就業規則の作成・届出も事業場ごとに行います。

しかし、就業規則の場合は、常時使用する従業員数が
10人以上でないと作成・提出の義務が生じませんでした(労働基準法89条)

就業規則は以下のような扱いになります。

一企業が2工場を有しており、いずれの工場も10人未満である場合は、一企業単位で見た場合は10人以上であったとしても、就業規則の作成義務は生じない(昭和61.6.6基発333号)

しかし、就業規則とは違い労使協定は従業員が1名から必要です。

事業所別に作成して届出が必要なものは届け出なければなりません。

もし、今まで自社の事業場の単位について考えてこなかったのであれば
この際、一度、精査してみてください。

ご存じなかったのであれば、今からでも提出しましょう。

その段階で違法な状態ではなくなるのですから。

労災保険の適用単位との関係

労災保険の加入も企業単位ではなかったですよね。

事業単位だったはずです。

工場と事務所が同じ場所で一体だった場合、
それは一つの事業でしたが、

工場が大きくなり工場として独立したら
それぞれを独立の事業として保険関係成立届を
出す必要がありましたよね。

労災保険法と労働基準法では法律が違うので
一緒ではないのですが、
イメージとしてはそれと同じようにお考えください。

そうそう、労災保険について言えば、
事務所だけの機能(本社機能)しかなくなったのであれば、
製造業のカテゴリではなくなりますので
保険料率が下げります。

事故が起きる確率は工場と比べて下がるからです。

保険料にかかわってくることです。

ご存じだと思いますが、念のため。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

執筆者
特定社会保険労務士 小嶋裕司

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