自転車通勤規程に最低限規定すべきポイント
自転車通勤は都市の満員電車を避ける
という意味でとても有効な手段です。
その際に、時差出勤と併用すると
より効果的ですよね。
ただ、自転車通勤は事故を伴います。
最低限、注意点として以下に書いてあることは押さえて
自転車通勤の制度を導入してください。
そして、ルール化して自転車通勤規程
をつくることは必須です。
今回は、最低限、これだけは抑えておくべきポイント
を書いていきます。
自転車の業務使用を禁止しましょう
まず、前提として押させておいていただきたいのは、
通勤中の自転車の利用については、
仮に、社員の方が事故を起こしたとしても、
事故を起こした従業員本人の責任であって、
原則として会社に責任はありません。
しかし、例外として会社が責任を負うことがあります。
社員の方が自転車を業務使用して
事故を起こした場合には会社も責任を問われます。
ですので、自転車の業務使用は絶対に不可
と明記する規定は必要です。
もちろん、徹底させてください。
自転車を業務に使用しやすい事例
「通勤に使用した自転車を業務に
使用する社員なんているのか?」
そう思う方もいるかもしれませんね。
そこで、事例を一つあげておきます。
自転車で会社まで来た社員が
その自転車でお客様訪問した場合、
そのお客様への訪問は業務ですよね。
では、そこへ自転車で行く最中に
事故が起きたらどうなるでしょうか?
歩いていくには少し遠いけれど、
電車では行きたくない(却って遠回り)。
しかも、急がないと遅刻してしまう・・。
そのような場合、軽い気持ちで自転車を
使用してしまう社員がいるのは
容易に想像できませんか?
自転車の業務使用は不可と明記としましょう。
自転車保険への加入について
2020年4月1日から東京都の条例
(「東京都自転車の安全で適正な利用の推進に関する条例)
の改正により『自転車の利用者』に対人賠償事故保険へ
の加入が義務化されています。
それにより、自転車を業務で使用する事業者
にも同様の義務が課されています。
また、自転車を利用して通勤する従業員がいる事業者にも、
自転車通勤者が自転車損害賠償保険等に加入していることを
確認する努力義務が課されています。
保険に加入しているかどうか確認ができないときは、
自転車損害賠償保険等への加入に関する情報提供
の努力義務が課されます。
(東京都自転車の安全で適正な利用の推進に関する条例
第27条の5第3項4項)
このような努力義務が自転車通勤を
認める会社にも課されます。
今回の条例では努力義務ではありますが、
対人賠償事故保険に加入していることを
確認することは会社のリスク管理としても
必須だと思われます。
きちんと自転車通勤規程に規定を設けましょう。
なお、補償額についてですが、
1億円以上としている会社が多いようです。
自転車保険の更新についても規定しましょう
また、自転車通勤を認める際だけではなく、
自転車保険をきちんと更新しているか
の確認も必要です。
保険が切れている自転車で通勤しては
意味がありませんからね。
この更新の規定がほとんどの
自転車通勤規程にありませんが、
必ず明記しましょう。
通勤に利用する自転車を明記しましょう
自転車の対人賠償事故保険に加入したとしても、
申請してきた自転車以外(保険に加入していない自転車)
で通勤しても意味がありません。
「人の自転車で通勤なんてあるわけない!」
と思われるかもしれません。
しかし、そんなことはありません。
自転車がパンクしてしまったらどうしますか?
家族の自転車を借りて通勤する
ことは普通にあります。
申請した自転車以外は通勤に使用してはならない
ことを自転車通勤規程に記載し社員の方
にもきちんと説明しましょう。
公共交通機関を利用した場合の通勤手当について
これまでは、非課税限度額の範囲内で通勤距離に応じて
額を決めている会社がほとんどでした。
また、雨が降って公共交通機関を利用した際の取扱い
についても規定していない会社がほとんどでした。
理由は明確です。
そもそも、公共交通機関を利用できる社員には
自転車通勤を認めない会社が多かったからです。
自転車通勤を会社が認める条件として、
会社から近距離であることが
ほとんどだったからです。
しかし、時代が変わりました。
自転車通勤を推進する流れの中、
会社と自宅の距離が片道10キロ以上であっても
自転車通勤を認める会社が珍しくなくなってきました。
すると、雨の日に自転車通勤をすることは困難です。
雨の日は公共交通機関を利用せざるを得ません。
梅雨の時期などは雨の日がとても多いです。
このあたりを考慮して通勤手当の額を
決める必要があるでしょう。
公共交通機関利用の条件
公共交通機関利用の条件については、
天候に限定することはできません。
例えば、「寝不足」「自転車が整備不良のとき」
などがあるからです。
もちろん、自転車整備も普段から
万全にしてもらう必要はありますし、
体調にも気をつけてもらう必要があります。
しかし、現実問題として、自転車の整備不良等のときには
自転車通勤は困ります。
寝不足のときも同様です。
できるだけ予め決めておきましょう。
なお、公共交通機関の利用の条件以外にも
自転車通勤をしてはいけないときの条項として、
これらの場合を規定しておく必要もあります。
就業規則とは別に自転車通勤規程を作成しましょう
これには理由があります。
おそらく、マイカー通勤規程に比べて
それほど、分厚い規程にはならないと思いますが、
別規程にすることで自転車通勤規程が
社員教育マニュアルにもなります。
その自転車通勤規程を用いると
社員教育がスムーズです。
それは、マイカー通勤を認める際も
同様です。
自転車通勤規程はひな形を利用して
簡易なものを作成している企業が
多いと思いますが、
できれば、社員教育のマニュアルとして
使用できるレベルのものにして下さい。
自転車通勤の際の労災(通勤の逸脱・中断)
自転車通勤の際の労災についてもきちんと
学んでおいていただく必要はあります。
自転車ですと帰宅の途中で
少し離れた場所へ移動しやすいです。
例えば、帰宅途中に友人宅へ遊びにいって
その後に、自宅へ戻る際に事故にあった場合の話などです。
「この場合には労災が認められる」
「この場合には労災が認められない」
そのパターンは会社・自転車通勤者自体
が把握しておく必要があります。
なお、これは、通勤の逸脱・通勤の中断という
概念を理解しておく必要がありますが、
それは、自転車特有の問題ではないので
今回は詳しく触れません。
社員教育がとても大切です。
他にも、事故時の取扱いや、駐車場の確保の問題
そして、会社ごとに独自の問題も出てきます。
きちんとルールを決めておきましょう。
自転車はとても危険な乗り物です
最初にも少し書きましたが、
私は、雨の日等を除き、
自宅(大田区)から事務所(中央区月島)間を
2019年現在まで、毎日、自転車通勤をしております。
2011年からずっとです。
2011年までも大田区ー港区海岸間
を自転車通勤しておりました。
自転車通勤の専門家と言ってもよいぐらいです。
そのうえで、お話をさせていただきますが、
本当に、自転車は危険な乗り物です。
ぜひ、きちんとルール整備をしてください。
今回、ご指摘した問題点を全て網羅した
雛形はほとんど存在していませんが、
最低限、規定にも盛り込みましょう。
しつこいようですが、最低限です。
ここに記載してあることに加えて
会社の個別の事情も加味してください。
雛型とはそういう意味です。
また、自転車通勤規程に限らないことですが、
就業規則に記載されていることは契約書になります。
だからこそ、違反した社員には懲戒処分を
かすことができるのです。
そういう認識で1行1行丁寧に作りこんでください。
今回は自転車通勤の話でしたが、
マイカー通勤については更に慎重な検討が必要です。
運転者(従業員)が加害者となった場合に、
大きな事故につながる可能性が自転車よりも大きいからです。
もし、自信がない場合には、
当事務所の無料相談をご利用ください。
リスクを回避する自転車通勤規程のご提案ができます。
実際に、作成するのは有料ですが、
ご相談は無料です。
このページの右上にある
「■お問合せ・ご相談はこちら【全国対応】」
から必要事項をご記入の上、
「相談希望」とご記入の上お申し込みください。
原則として、24時間以内に当事務所
代表から折り返しご連絡を差し上げます。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
追記 自転車通勤について、電話取材を受けました
この記事をご覧になった全国放送のテレビ局の記者から
自転車通勤について電話取材を受けました。
取材はオンライン用の記事のためのもののようです。
取材の内容は「自転車通勤を認めるに際して、会社が1番注意すべきことは何か?」
という内容でした。
「最も重要なことは何か」と考えた結果
やはり、「社員教育です」とお話をさせて頂きました。
今後、自転車通勤を認める会社
はますます増えてくると思いますが、
ぜひ、会社としてきちんとした対策をしてください。
就業規則を使った社員教育については
社員説明会が有効です。
特に、自転車通勤やマイカー通勤
については非常に有効です。
執筆者
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表・特定社会保険労務士 小嶋 裕司
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