副業を就業規則で認める問題点~2つの会社で1日10時間労働。割増賃金必要?
意外にご存じない方が多いようですので、
副業(つまり、複数の会社で働く社員)の時間外割増賃金
についてお話をさせていただきます。
A社での1日の所定労働時間が8時間
だったとします。
そして、B社で副業を行い
1日2時間働いたとします。
この方は、1日10時間働いています。
1日の法定労働時間は8時間ですので
法定労働時間を超えています。
この2時間は時間外労働になるのでしょうか?
会社が違うのだから関係ないでしょうか?
この扱いには法律に規定があります。
■労働基準法第38条
労働時間は、事業場を異にする場合においても、
労働時間に関する規定の適用については通算する。
そして「事業場を異にする」については通達があります。
■「事業場を異にする」とは、労働者が1日のうち、
甲事業場で労働した後に乙事業場で労働することをいう。
この場合、同一事業主に属する異なった事業場において労働する場合のみでなく、
事業主を異にする事業場において労働する場合も含まれる
(昭23・5・14 基発第769号)。
つまり、毎日2時間の時間外労働を行わせたことになり
時間外割増賃金を支払う必要があるということです。
しかし、この時間外割増賃金をどちらの会社
が支払うのでしょうか?
どちらが払うのか?についても通達があります。
■法定時間外に使用した事業主は法337条に基づき
割増賃金を支払わないといけない。
(昭23.10.14 基収2117号)
例えば、一日のうち、最初の会社(A社)で6時間働き、
その後、B社(副業先)で3時間働いた場合に、
どちらの会社が支払うことになるのでしょうか?
通達の通りだとB社(副業先)ということになりますね。
では、副業先の会社であるB社で早朝3時間働き、
その後、A社で6時間働いたらどうなるでしょうか?
1日の労働時間が9時間となりますが、
8時間を超えた1時間分はA社で働いたことになり、
時間外割増賃金を支払う義務があるのは
A社ということになりませんか?
「後から契約した会社が支払うべき」
という見解もあります。
しかし、通達をそのまま読むと
そのようにはなっていませんね。
副業先は違う会社なのですから、
労働時間管理が難しいです。
意図せず時間外労働が発生し、
時間外割増賃金の支払いが必要になる・・
そんな難しい問題が生じないようにするために、
副業禁止規定を設けて就業規則で設けて
副業を禁止している会社が多いというのもあります。
しかし、2016年の現在、時代の流れは副業を
推進する方向にもちろん流れています。
副業を認めるメリットも会社としてある
場合もあるでしょう。
そこで、ここで述べたような事態が生じないように
きちんと制度を整備しておくべきでしょう。
スタートアップ企業の経営者・人事の方へ
副業を含めた柔軟な働き方を認めるためには、
企業の実情に合った就業規則の整備が不可欠です。
副業を含めた柔軟な働き方のメリットと
リスクについて解説しています。
詳しくは「スタートアップ企業の就業規則の特徴~自由な・柔軟な働き方を認めるベンチャー企業」をご覧ください。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
追記(2022年11月5日追記)
副業についてはガイドラインの改訂が何度か行われましたが、
最新版のガイドラインは以下になります。
副業・兼業の促進に関するガイドライン – 厚生労働省
令和2年改定のガイドラインについての
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