副業で多く寄せられる相談(事例) ~副業の推進に関するガイドライン改定で、副業について殆どの問題に対処可能になりました
最近、本当に、副業を認める会社が増えてきました。
当社労士事務所にもたくさんの副業のご相談が
寄せられるようになりました。
今回は、どんなご相談が多いのかをご紹介します。
他社がどんなことで悩んでいるかがわかれば、
この記事をお読みの経営者・実務担当者の方の
お役にも立つと思うからです。
副業のご相談 事例
ご相談の事例は、副業を開始する前のご相談と
副業開始後のご相談に分けることができます。
副業開始前のご相談事例
➀ 副業のルールの明確化
「副業を認めようと思うのですが、
後々、問題になったら嫌です。
どんなトラブルが起きやすいか注意点を教えてください。
そのうえで、それらが起きても困らない副業規程を
作成して下さい。
このようなご相談が多いです。
副業は、大体、以下の問題が生じます。
・長時間労働の懸念日の問題
・労働時間の管理の問題(通算の問題)
・社員の職務専念義務違反
・社員の競業避止義務違反
・社員の秘密保持義務違反
特に、秘密保持義務は注意が必要です。
同業他社などに自社の機密情報が漏れてしまったら大変です。
社員の方はそれほど重要だと思わないことであっても、
会社にとっては機密情報ということは良くあります。
きちんとルール化しておくことが必要です。
➁ パートタイマーとフルタイム労働者の副業
「今後は、定年後の再雇用者については、
週4日のパートタイマーも検討していきたいです。
その代わり、副業を認めていく方向で
考えていきたいと思います。
ただ、フルタイムで働いている正社員に副業を申請されると
休日出勤や残業をさせられなくなり困ります。
再雇用者のみ副業OKにして良いものかどうか?
良いなら、そのような形で整備したいです。」
副業は働き方についての話に発展していきます。
さらに、発展した内容のご相談が次になります。
➂ 残業激減による副業の許可
「会社の業務が減ったので残業がなくなりました。
休日出勤もなくなって、残業代を頼りにしていた
社員が副業を認めてほしいと言い始めました。
この際、会社としても、週4日や1日6時間の勤務
を希望者には導入にしようかと思っています。
その代替手段として、副業を認める
という制度を導入したいと思います。」
副業を認めた際のトラブルの話ではなく、
副業のご相談から発展して「限定社員」「準社員」等の
働き方へのご相談につながっていくことも増えました。
➃ 副業先との労働時間の通算方法
「労働時間の管理についてですが、
副業先の労働時間も通算して残業代を
を払わないといけないということですが、
具体的ににどうしたら良いのかわかりません。
手順を教えてください」
労働時間の通算の話は副業推進の
ガイドライン改定で整備されました。
副業を認める際の手順をご理解することが大切です。
以上のように、副業開始前のご相談一つとっても、
本当に様々です。
副業開始後のご相談事例
実際に副業を開始した後のトラブルについて
ご相談いただくことも多いです。
本当に様々な副業のご相談をお受けします。
ここでは、1つだけ、
典型的な副業開始後のご事例をご紹介します。
副業を認めた社員が仕事中も副業の仕事をする
これは、先ほどの職務専念義務違反に該当しますが、
単純に副業を禁止すれば済むという問題ではありません。
なぜでしょうか?
具体的な事例をご紹介します。
「副業を認めた社員が就業時間中に
副業先の顧客の対応(電話やメール)をするようになりました。
会社の業務に支障を生じさせたので、
副業を禁止しようとしたら、
「辞められたら困る」と副業先に言われたらしく、
社員が副業先と揉めてしまいました。
副業先に、1年の有期契約なので、
期間途中では辞められないはずだと。
どうしたらよいですか?」
副業先の企業が仰っているのは
どのようなことかを少し解説します。
有期労働契約については628条に規定があります。
第628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
原則、「やむを得ない事由」がなければ、
有期雇用労働者は契約期間中に会社を辞めることはできません。
副業先の会社は、このことを言っています。
とりあえず副業を認めて、問題が生じたら対応する。
そのような対応策は雇用型の副業に関してはご法度です。
なぜなら、いったん副業を認めてしまったら、
副業先という第三者を巻き込むことになるからです。
想定外の問題が生じます。
そのことを念頭において対策を立てるべきです。
副業に関する労働基準法をはじめとした法整備
このように、様々な相談を受けるようになった副業ですが、
実は、法整備が追い付いていませんでした。
しかし、令和2年9月に副業のガイドラインが改正され、
法的な整備は一気に進みました。
副業に関しては労働基準法だけではなく
労災保険、雇用保険、厚生年金保険、健康保険等の整備も必要になりますが、
副業に関する法的な面は一通り整備されたといって良いと思います。
私が疑問を感じていた箇所についても
ほぼガイドラインで解説されています。
ここでは、労働時間の法整備について解説します。
労働基準法の法整備
実は、今まで、労働時間について、「労働時間は副業先の時間も通算する」とあるだけで、
細かいことに関する取り決めは殆どありませんでした。
以下の通り規定されているだけでした。
労基法第38条第1項「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」
この事業場の定義ですが、法律には規定がなく通達で規定されています。
「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合も含む(労働基準局長通達(昭和23年5月14日付け基発第769号))
副業先の労働時間を加えて法定労働時間を超えていたら
自社でも時間外割増賃金が必要になるわけです。
例えば、(1日)自社で5時間働き、副業先でも4時間働いたら、
1日1時間の時間外労働が発生します。
当然、割増賃金が必要です。
しかし、これだけでは、どのようにしたら
良いのかさっぱりわかりません。
自社と副業先のどちらが負担するのか?
様々な議論がありました。
更に、そもそも、労働時間を通算することなど実務上可能なのか?
具体的にはどのように副業先の労働時間を把握したら良いのか?
実務を行っている人間からすると疑問がありました。
それに、副業先の労働時間を通算して
労働時間の月の上限を考えるわけですから、
フルタイムで働いている社員については
長時間労働に対する規制がどんどん厳しくなる中、
副業はそれに逆行するようにも思えますよね。
長時間労働についてどのように対応したら良いのか?
もし、労働時間の上限規制に違反したら、
罰せられるのは自社と副業先のどちらなのか?
労働時間の管理方法一つとっても
多くの疑問が出てきます。
こういった問題についてもガイドラインの改定で
解決したといって良いと思います。
これなら、労働時間の管理も可能です。
ぜひ、1度、「副業の推進に関するガイドライン」をお読み下さい。
もちろん、これを読んだだけで全てに
対応できるようになるわけではありませんが、
副業を認める際の注意点も含めて
ガイドラインに書いていあることを実務家が応用すれば、
多くの問題に対処できるようになります。
ただ、副業のガイドラインは大変すばらしいのですが、
十分な把握は難しいというご意見をいただきます。
もし、自社で副業の整備が難しいようであれば、
専門家にご相談することをお勧めします。
ガイドラインの内容を実際の現場や自社の働き方の戦略に
どう取り入れるかは専門的な知識が求められるからです。
当事務所でも、ご相談者様の企業への副業の
現実的な導入jのご相談を行っています。
当事務所は就業規則に専門特化した社労士事務所ですので、
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最後まで、お読みいただきありがとうございました。
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