休憩は一斉にとらないといけないのはなぜですか?~一斉休憩が求められる理由

休憩は一斉に与えないと
いけないことになっています。

労働基準法34条に休憩の条文があり、
第2項に一斉休憩の項があります。

労働基準法34条第2項
前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

「それって、従業員の好きな時間に休憩をとって良い
としてはいけないということですか?」
というご質問を受けることがありますが、

原則として、そのような休憩の与え方はいけません。

従業員の好きな時間に休憩を取れれば、
従業員も喜んでくれるでしょうし、
なぜ、それがいけないのか?

確かに、疑問が生じますよね。

しかし、休憩をバラバラに与えてはいけない
のには理由があります。

皆が働いている中で一人だけ休憩を取る
のは抵抗がないでしょうか?

やっぱり、抵抗がありますよね。

共同作業だとなおさらです。

例えば、暑い中、積荷を降ろしているのを
想像してみてください。

「自分だけ休んでいられない」となりますよね。

結局、休憩を取らない従業員の方や、
少しでも早く仕事に戻ろうという従業員
が出てきてしまいます。

そのような理由から、会社は休憩は一斉に与えない
といけないとなっているのです。

一斉に休憩を与えないで良い場合

しかし、この原則を貫き通すと、
いろいろと不合理な面があります。

そこで、一斉に休憩を与えないで良い場合が2パターン認められています。

一斉に休憩を与えないで良い業種

そもそも、一斉に休憩を与えないで良い業種
というものが認められています。

業種によっては一斉に休憩を取られると
国民が困る場合もあるからです。

例えば、銀行で働いている窓口の方が
一斉に休憩を取得しなければならないとなったら、
どうなるでしょうか?

お昼に銀行がやってない!

そうなったら、どうなるでしょうか?

国民が困りますよね。

そこで、一斉に休憩を与えなくても良い業種
というものが認められているのです。

労働基準法施行規則第31条に業種が定められています。

・運輸交通業(法別表1第4号)・商業(法別表1第8号)
・金融保険業(法別表1第9号)・興業の事業(法別表1第10号)
・通信業(法別表1第11号)・保健衛生業(法別表1第13号)
・接客娯楽業(法別表1第14号)・官公署の事業(同表に掲げる事業を除く。)

かなり、幅広く認められていますね。

なお、上記の表には『法別表第何号』という記載がありますよね。

その解説をさせていただきます。

労働基準法では別表1というもので業種が分類されています。

その分類の号数です。

以下がその別表となります。

別表第1
一 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。)
二 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業
三 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
四 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
五 ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
八 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
九 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
十 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
十一 郵便、信書便又は電気通信の事業
十二 教育、研究又は調査の事業
十三 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
十四 旅館、料理店、飲食店、接客業又

一斉休憩の例外に当たる業種以外にもこの業種の分類は出てきますので、
御社がどの業種に分類されるかは抑えておいてください。

労使協定締結による一斉休憩の例外

さらに、労働基準法施行規則第31条に規定のない業種であっても、
一斉に休憩を一斉に与えなくも不合理ではない場合もありますよね?

一斉に与えないといけないとされた理由を思い出してください。

むしろ、逆に、業務の円滑な運営上支障が生じる場合もありえます。

そこで、業務の円滑な運営上支障があると
判断されるような事業については

従業員の過半数を代表する従業員と
協定を結べば交代で休憩を与えることも
できることになっています。

先ほどの条文(労働基準法34条2項)の
「ただし、」以降がこれに当たります。

一斉休憩の適用除外の労使協定です。

この労使協定には、「一斉に休憩を与えない労働者の範囲
及び当該労働者に対する休憩の与え方」について、
協定しなければならないとなっています。
(労働基準法施行規則第15条)

休憩時間をきちんととっていなかった場合の法的問題

休憩を与えなかったとして法違反になるのは当然ですが、
問題はそれだけではありません。

当然、社員には賃金請求権が発生します。

賃金を支払っていなかった場合は賃金の未払いになります。

実際、会社を辞めた社員からの未払い残業代などの請求で
「休憩がとれていなかったので休憩時間中の賃金を支払え!」
という主張は多いです。

会社の所定労働時間が8時間だった場合、
当然、1日の労働時間は8時間を超えますので
会社としては時間外労働をさせていない認識だったとしても
1.25で計算した賃金が発生します。

終業時刻後に働こうが、途中で多く働こうが、
8時間を超えれば結果として同じことです。

労働基準監督署の是正勧告でも
休憩時間をとっていなかったことによる
賃金(残業代)の未払いの指摘もあります。

社員1人につき数十分程度であっても毎日のことです。

もし、社員数30人分程、3年遡ったとしたら
いくらになるでしょうか?

(現在、賃金の消滅時効は3年に延長されています。)

ビックリする金額になると思います。

以下の記事のケーススタディでご確認ください。

未払い残業代の総額:社員10名で2000万円弱のケーススタディ

休憩をとっていない社員がいるのであれば、
1日でも早く解消するようにしてください。

休憩について曖昧にしていて良いことは何もありません。

同様の問題は着替えの時間についても当てはまります。

着がえ(更衣時間)は労働時間ですか?

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残業代の問題は複雑で、
自社で対処しようとしても、
現実的な解決策が見つからないようです。

身近な専門家に相談したこともある方も多いようです。

休憩時間をどう位置付けるかは残業代削減のカギです。

もし、何とかしたいと思いつつも、
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最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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