退職金規程の変更に必要な考え方~既得権と期待権を区別してください

退職金規程を作成するのは簡単です。

私が知る限り退職金規程のパターンは
それほどありません。

最終給与比例方式
別テーブル方式
ポイント制退職金制度
等がこれに当てはまります。

当事務所にご依頼いただくと
退職金規程パターン一覧
というのをお渡ししています。

ほぼこの中に網羅されます。

これをご覧いただくと
「なるほど、日本の退職金規程は

大体このようなパターンしかないのか?」
とご理解いただけると思います。

退職金規程ではどのような従業員にどれだけの退職金
を支給するのか(対象や支給額を定める基準等)
を定めるだけです。

そして、次に、その退職金規程で保証した退職金を
どのように用意するかが問題となります。

退職金制度を設けても払えないと困ります。

その都度、借り入れをするという会社様も
中にはあるかもしれませんが・・

現実的ではないですよね。

そのために積み立ての問題が生じます。

退職金制度をどう設計するかと
積み立ての問題は分けて考えてください。

積み立てで有名なのは
中小企業退職金共済(中退共)ですね。

・確定給付企業年金
・中退共
・民間の保険
を利用するなどもありますね。

退職金の積み立て不足の問題

万が一、現在の退職金規程で従業員の退職金を計算してみたら
退職金をご用意できていなかった場合はどうしたら良いでしょうか?

「退職金規程を開いてみたらとんでもない額になっていた」
「これでは払えない」

深い意味がなく退職金規程を作成してしまって、
しかも、積み立てをしていなかった場合に、
そのようなこともありえます。

退職金は賃金の後払い的な性格を有しているため、
今まで勤続した年数に応じて保証した退職金
を減額するのは困難です。

以下の通達、及び判例をご覧ください。

就業規則等で予め支給条件が明確な退職金は賃金であるという通達です。

退職金、結婚祝金、死亡慶弔金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないこと。ただし、退職金、結婚見舞金等であって、労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件の明確なものはこの限りでないこと(昭和22年9月13日基発17号)

就業規則等で支給が義務付けられている退職金は賃金であるという判例です。

退職金の法的な性格については功労報償説、生活補償説、賃金後払説と見解が分かれているが、就業規則、労働協約等によりその支給が義務付けられている限り、その支給は労働条件決定の基準たる意味を持つから、退職金は労働基準法11条の規定にいう労働の対償としての賃金とみるべきものである(江戸川製作所事件、東京高裁昭和44年7月24日判決)

言うまでもなく退職金規程は就業規則の一部です。

したがって、退職金規程が存在し計算方法等が明記されている以上、
退職金規程によって計算された退職金は賃金となります。

退職金が賃金であるということはどういうことでしょうか?

退職金は恩恵的なものであるという主張は
退職金規程で支給条件が明確である以上、
認められないことになります。

福利厚生のようなイメージで
とらえている会社がありますが、
とても危険な考え方です。

(退職金の)既得権と期待権の区別

退職金が賃金であるということは
退職金を支払わないと賃金未払いになります。

そして、もし、減額しようとするのであれば、
従業員の同意が必要になってきます。
(既得権の保護)

しかし、今までの勤続年数に応じた退職金の額
は既得権として保護されるにしても、

これからの勤続年数に応じて支給されることになる
退職金(将来部分)についてはどうでしょう?

期待権と言って既得権と区別されます。

➀既に額が確定した過去の勤続期間に対応した額(既得権)

➁今後の勤続期間に対応した額(期待権)

分けてお考えください。

この期待権については今まで争いになり、

さまざまな裁判例が出されています。

事案ごとに個別の判断がなされていて、
どの程度の不利益が認められるかは
一概に言えません。

社員の方が被る不利益を軽くするための代替措置を設けたり
新制度への移行期間を設けるなどして
労使で十分な話し合いの場を持ちましょう。

しかし、後々社員の方と揉めないためにも
きちんと個別の同意を得ることをお勧めします。

退職金は長期雇用を前提とした制度

歴史のある会社の就業規則を拝見すると
たいてい退職金制度があります。

当事務所のお客様の約半数は二代目社長の会社ですので、
退職金があるご相談者が非常に多いです。

しかし、最近設立された会社様には
退職金制度を設けている会社は少ないです。

時代が変わったのでしょう。

退職金制度は長期雇用を前提とした制度です。

社員にとっても転職が当たり前になり、
定年まで同じ会社に勤める方は少数になりました。

そういう時代の変化を考えれば、

長期に働いた結果としてもらえる退職金よりも
毎月の賃金を多くもらいたい。

そのような社員の方も多いでしょう。

退職金制度を変更する必要があるなら、
それキッカケにして、

これからの会社をどうしていくかについても
社員の方と話し合う機会にしてはいかがでしょうか?

退職金規程 無料相談を行っています

退職金の変更(導入も同じです)には
正しい手順があります。

また、退職金の問題は膨大な金額を
扱うことになりますので、

実際に変更を行う際には
経験豊富な専門家にご相談ください。

退職金はトラブルに発展しやすい問題の1つです。

当事務所では、クライアント企業に老舗企業が多いため、
退職金規程には精通しています。

御社の実情に合わせた最適な退職金規程の変更
の提案を行っています。

無料相談を行っていますので、
まずは以下のステップに従ってお問い合わせください。

1.ページの右上にある「■お問合わせ・ご相談はこちら」をクリックします。
2.必要事項をご記入の上、「退職金無料相談希望」と明記します。
3.送信ボタンを押して無料相談へお申し込みください。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

執筆者
特定社会保険労務士 小嶋裕司

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