懲戒処分をできない就業規則 ~実際の就業規則を見ながら解説します
そもそも懲戒処分とは何でしょうか?
すごくわかりやすく言うと、
会社は就業規則に定めることで、
それに違反した従業員に制裁罰を課すことができます。
具体的には始末書の提出や懲戒解雇などですね。
したがって、就業規則を作成する際に、
非常に重要になってきます。
会社がルールを作成しても従業員の方が
守ってくれなければ意味がないですから
ルールとセットのものになります。
その懲戒の記載をする際に、もっとも大切なことは何でしょうか?
しかし、疑問に思われる方もいると思います。
確かに、社員は会社からお給料をもらっています。
雇用契約の性質上、会社の指示や命令に
従わないといけません。
しかし、だからと言って、
罰を課すことができるのでしょうか?
当然、懲戒処分をかすには条件があります。
就業規則に懲戒の規定があることが大前提です。
そして、以下を就業規則に記載しないといけません。
➀どのようなときに懲戒を行うのか?(懲戒の事由)
➁どのような懲戒を行うのか?(懲戒の種類)
この2つを記載することが必要です。
しかも、詳細に規定することです。
なぜなら、就業規則に記載のない事由での懲戒
や就業規則にない種類の懲戒はできないからです。
これは、実際の就業規則の規定例を見ていただき
解説する方がわかりやすいと思いますので、
実際の就業規則の規定例を見ながら解説します。
就業規則の規定例を用いて解説します
以下の就業規則の条文があったとします。
何が問題でしょうか?
(懲戒の事由)
第〇条 従業員が次の各項のいずれかに該当したときは懲戒する。
1 やむを得ない理由だなく、しばしば 無断で欠勤、遅刻、早退等したとき
2 出勤不良、業務不熱心で上司の注意を受けても改まらないとき
3 許可なく会社の物品を持ち出したとき
4 重要な経歴を偽り、また、不正な方法を用いたりして入社したことが判明したとき
5 会社の業務上の秘密を洩らし、または洩らそうとしたとき
6 暴力を振るったとき
7 刑法に反し禁固以上の刑が確定したとき
8 偽った内容の出勤簿を作成、提出したとき
9 業務に関し、お客様から不当に金品その他を受け取り、または与えたとき
よくみる規定ですが何が問題でしょうか?
1.まず、懲戒の事由が網羅されていません。
例えば、会社のお金を横領した
従業員がいたとします。
会社としては懲戒したいはずです。
最悪の場合、懲戒解雇も検討しないといけないでしょう。
しかし、上記の就業規則の条文にはその記載がありません。
したがって、社員の横領行為に対して懲戒ができません。
これは、困るのではないでしょうか?
それは刑法に反するのではないか?
そう思われた方もいるでしょうが、
7で「刑法に反し禁固以上の刑法の刑が確定したとき」
と言っています。
まだ、裁判にもなっていない段階
での懲戒解雇はどうなるでしょうか?
2.懲戒をあまりに限定しすぎています。
例えば、無断欠勤をした場合、始末書を提出してもらう必要があるでしょう。
つまり、懲戒処分をする必要があるでしょう。
しかし、上記の1では遅刻に対して「しばしば」と限定しています。
たった1回の無断欠勤では問題がないということでしょうか?
それでは、困るはずです。
また、「暴行」と限定していることも問題です。
言うまでもなく脅迫や侮辱行為等も対象にすべきです。
3.「服務規律に反したとき」を懲戒の対象にすることが必要です
この1文も必要です。
服務規律は社員が守るべき規則です。
それに反したら、懲戒処分を受けるという1文が必要です。
せっかく服務規律を就業規則に設けているにも関わらず
それが懲戒の対象になっていません。
何のための服務規律でしょうか?
4.絶対に必要な1文がありません
就業規則に懲戒の事由を網羅することは意外に大変です。
しかし、たった1文でそれを網羅することができます。
いわゆる包括条項というものです。
そのような1文が絶対に必要ですが、
その1文がありません。
懲戒できない就業規則まとめ
以上、具体的な就業規則の条文を使って懲戒の規定をみてきましたが、
非常に多い規定例です。
多くの方が働く会社では職場の秩序が大切です。
秩序が乱れると困るのは会社だけではありません。
真面目に働いている社員も困ります。
きちんと懲戒規定を整備してください。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
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