同一労働同一賃金に関する指針の誤解~短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針
『同一労働同一賃金ガイドライン』が
『短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する
不合理な待遇の禁止等に関する指針』と名称変更されました。
そして、内容に関しては新たに追加した点などがあります。
以前に、同一労働同一賃金のガイドライン案
が出された時に内容を大きく誤解してしまった
方が多かったようです。
そして、誤解したままの方もいらっしゃいます。
そこで、まずはその誤解を解きたいと思います。
既に「しっているよ!」という方は流し読みをしてください。
同一労働同一賃金ガイドライン案に対する誤解
同一労働同一賃金ガイドライン案という名前から
どのようなイメージをもたれるでしょうか?
「同一の労働をしていれば、
同一の賃金を支払わなければならない」
「同一の価値の労働をしていれば
同一の賃金を支払わないといけない」
普通に考えるとそのようなもの
をイメージすると思います。
そう考えれば、当然のことながら
勤続年数が10年の社員と今年入社の社員でも
同じ労働をしていれば
同一の賃金を支払わないといけない
そのようなものをイメージすると思います。
しかしながら、同一労働同一賃金ガイドライン案
はそのような内容ではありませんでした。
もちろん、それをベースにした今回改正された
『短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する
不合理な待遇の禁止等に関する指針』
もそのような内容ではありません。
同一の労働をしていても勤続年数の違いにより
賃金に違いを設けることも可能ですし
同一の労働をしていても責任の違いによって
賃金に違いを設けることも可能です。
なぜ、同一の労働をしている限り
同じ賃金を支払わないといけない
という誤解を生んでいるのでしょうか?
それは、多くの方が『同一労働同一賃金』
という名称のイメージで話をしているからです。
内容をきちんと読めば、そのようなものではない
ことはすぐわかります。
『短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針』の目指すもの
では、『短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する
不合理な待遇の禁止等に関する指針』は
何を目指しているのでしょうか?
それは、指針(ガイドライン)のに目的
部分にはっきりと記載してあります。
(目的)
我が国が目指す同一労働同一賃金は、同一の事業主に雇用される通常の労働者と短時間・有期雇 用労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消並びに派遣先に雇用され る通常の労働者と派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消(協 定対象派遣労働者にあっては、当該協定対象派遣労働者の待遇が労働者派遣法第30条の4第1項の 協定により決定された事項に沿った運用がなされていること)を目指すものである。
要するに、通常の労働者と短時間・有期雇 用労働者との間
の不合理な待遇差の是正です。
それが同一労働同一賃金の内容です。
ある個所では同一労働同一賃金という言葉を使っているのに、
違う個所では不合理な待遇差の解消という言葉を使っていたりして
訳が分からないという方が多いようですが、
同一労働同一賃金と不合理な待遇差の解消は
イコールなのです。
そして、不合理な待遇差の解消が目的であって
待遇差自体があってはダメというものではありません。
そして、この指針には、
どのような待遇差が不合理なものか?
どのような待遇差が不合理なものでないのか?
具体例が挙げられています。
それは、ガイドライン案の『基本的な考え方』と言う部分に記載されています。
(基本的な考え方)
この指針は、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間に待遇の相違が存在 する場合に、いかなる待遇の相違が不合理と認められるものであり、いかなる待遇の相違が不合理 なものでないのかを示したものである。この際、典型的な事例として整理できるものについては、問題とならない例・問題となる例という形で具体例を付した。
同一の労働をしている限り同一の賃金を
支払わないといけないのであれば、
待遇差があって良いわけありませんよね。
しかし、上記の『基本的な考え』にはそうはなっていません。
つまり、待遇差はあっても良いのです。
繰り返しになりますが、
いけないのは不合理な待遇差なのです。
具体例が書かれていますので、
この指針を参照して自社の待遇差が不合理かどうかを
ご判断する際の判断材料になるでしょう。
この指針は、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の話です
この指針には以下のように記載されています。
通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる 待遇の相違等を対象とするものであり、この指針は、当該通常の労働者と短時間・有期雇用労働者 及び派遣労働者との間に実際に待遇の相違が存在する場合に参照されることを目的としている。こ のため、そもそも客観的にみて待遇の相違が存在しない場合については、この指針の対象ではない。
「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる 待遇の相違」
この1文からもそれが読み取れます。
つまり、通常の労働者同士の話は射程外でなのです。
例えば、正社員同士で待遇差が不合理か否かは
今回の改正では関係がないということです。
もう一つこの指針が対象としていないものを解説します。
不合理な待遇差の解消の学んでいくと
均等待遇と均衡待遇という言葉が出てきますよね。
不合理な待遇差の具体的な内容が
この二つの言葉だからです。
そして、この指針は『均衡待遇』に
関するものとなっています。
「どういうこと?」と疑問に思われた方は
以下の記事もお読みください。
詳しく解説しています。
同一労働同一賃金とは?~わかりやすく社労士が解説します
最後まで、お読みいただきありがとうございました。