定額残業代の廃止・減額 働き方改革・コロナ禍で激増した相談

定額残業代については、
ここで解説する必要がないぐらい
一般化しましたね。

2016年ぐらいから新規で
ご相談を受けることもなくなりました。

色々なサイトで解説されていて
自社で行う会社が増えたのでしょう。

ところが、最近は非常にご相談が増えました。

定額残業代を廃止・減額(縮小)したい
というご相談です。

今回は、その問題について解説します。

定額残業代の廃止・減額したいという理由

一言で言うと、
「残業が減ったので定額残業代を支給する理由がなくなった」
ということのようです。

現在は、状況は変わりましたが、
確かに、コロナ禍でそのような会社が増えました。

テレワークが増えたというのもあります。

「なぜ、テレワークが増えると残業が減るのか?」
については今回のテーマではないので触れませんが、

これもコロナ禍で残業が減ったケース
と言えるでしょう。

また、働き方改革の取組の結果、
残業が減ったという企業も多いです。

2023年には、中小企業でも、
月60時間超えの時間外労働の
割増賃金が5割になりましたが、

当事務所のお客様の会社では混乱はおきていません。

そのような長時間労働をする社員は
少数になっているからです。

この法律が成立したのは平成20年は、
30代の子育て世代の男性のうち、
月の時間外労働が60時間を超える
労働者の割合は20%となっていたようです。

現在は、そこまでの社員が月60時間超の
時間外労働をしていないですよね。

働き方改革の結果、
残業は確実に減っています。

定額残業代の廃止・減額の法的問題点

では、定額残業代を会社が
一方的に廃止・減額することは
できるのでしょうか?

この問題を考えるためには、
定額残業代の性質からお話をする必要があります。

定額残業代を月40時間分支給するということは
一般的に言って、社員の皆さんからすれば以下の意味をもちます。

「1時間しか残業をしない月も40時間分の残業代がもらえ、
40時間を超えた月は1分単位で追加して残業代をもらえる」

つまり、社員からみれば圧倒的に有利な制度です。
言葉を変えると法律を上回る支払い方をする制度です。

だからこそ、法律とは違った計算方法で
支給することが認められているわけです。

これを「定額残業代は残業代の
最低保証給である」と言います。

もちろん、そのような制度設計に
しないことも可能ですが、

殆どの企業では
定額残業代を支給する趣旨を明確にしていため、
残業代の最低保障給として支給する形になっています。

そうなると、就業規則を変更して定額残業代を
廃止・減額することは就業規則の不利益変更になります。

就業規則の不利益変更とは?

就業規則の不利益変更については
以下のブログで記事を書いていますので、
就業規則の不利益変更を初めて聞いたという方は
お読み下さい。

従業員の労働条件を就業規則で従業員の不利益に変更することはできるのか?

一応、ここでも、就業規則の不利益変更の要件を簡単に説明します。

原則は、就業規則で労働者の労働条件を
不利益変更するには労働者の同意が必要です。

労働者の代表者ではなく労働者の皆さんの個別の同意です。

しかし、労働者の個々の同意が必ず必要かというと
そうではありません。

仮に、就業規則で労働者の同同条件を
不利益に変更したとしても、

変更後の内容が合理的なものであれば、
労働者の同意がなくても就業規則で
労働者の労働条件を引き下げるのも可能ということです。

しかし、この「合理性」はかなり厳しく判断されます。

簡単にご説明すると、このようになります。

定額残業代の廃止・減額は不利益変更か?

では、定額残業代の廃止・減額は
就業規則の不利益変更かという問題が生じます。

定額残業代を廃止・減額しようとする場合、
単純に人件費を削減する目的で行う場合と、
その削減した人件費を成果給として社員に
支払っていきたいという場合がありますよね。

分けてご説明します。

人件費を削減する目的の場合には、

単純に定額残業代に相当する
賃金が減額されています。

明らかに不利益な変更ですよね。

成果給として支払う場合

では、成果給として支払う場合はどうでしょうか?

賃金原資の配分を合理的に変更する場合とも言えます。

この場合、金額が増える社員もいる一方、
減る社員もいます。

定額残業代は、ほとんどの企業で、
最低保証給としての性質を有するので、

一般的にいって、
不利益な変更にあたると考えるべきです。

ただ、両者では不利益な変更と言っても
の手続が違ってきます。

不利益変更の手続

人件費削減目的の場合

毎月、残業を1時間もしなくても
40時間分支給すると就業規則で契約している以上、
残業が減ったからと言って廃止・減額は合理性はないですよね。

原則通り個別の同意が必要でしょう。

会社の経営危機などであれば話は変わってきます。

定額残業代を成果給として支払っていく場合

会社の総人件費を減らさないようにすれば、
単純に人件費を削減する目的の場合に比べて、
合理的な労働条件であるとして認められやすいでしょう。

もちろん、就業規則の不利益変更の手続に則って
進めることが必要なのは言うまでもありません。

・労使協議をきちんと行って
・激変緩和措置を3年ほどとるなどの手続
を踏まえる等の手続きを経ることは必要です。

ノイズ研究所事件判決が有名ですね。

主力商品の競争が激化した経営状況の中で、従業員の労働生産性を高めて競争力を強化する高度の必要性があったのであり、新賃金制度は、従業員に対して支給する 賃金原資の配分の仕方をより合理的なものに改めようとするものであって、どの従業員にも自己研鑽による職務遂行能力等の向上により昇格し、昇給することができるという平等な機会を保障しており、人事評価制度についても最低限度必要とされる程度の合理性を肯定し得るものであることからすれば、上記の必要性に見合ったものとして相当であり、~(省略)~ 労使の交渉の経緯や、それなりの緩和措置としての意義を有する経過措置が採られたことなど 諸事情を総合考慮するならば 、 上記のとおり不利益性があり、 現実に採られた経過措置が 2 年間に限って賃金減額分の一部を補てんするにとどまるものであっていささか性急で柔軟性に欠ける嫌いがないとはいえない点を考慮しても、なお、上記の不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の、高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるといわざるを得ない。
ノイズ研究所事件判決(東京高裁平成 18 年 6 月 22 日判決)

ただ、そういう法的な話を抜きにしても、
社員に説明しやすいと思いますがいかがでしょうか?

定額残業代の廃止・減額まとめ

ここ数年、ご相談が急増した、

定額残業代の減額・廃止について
今回はお話をさせて頂きました。

定額残業代に限った話ではありませんが、
社会情勢は大きく変わります。

この間まで、人手不足で困っていたかと思えば、
仕事が減って整理解雇を検討しないといけないことも起こります。

そして、また、人手不足の時代が来たりします。

制度を導入する際には、
そのような時代の変化に対応できるように設計しておくことが必要です。

今回のケースで言えば、一般的には、
定額残業代は最低保証給としての性質をもちますが、
そうならないように設計することも可能です。

残業代の問題は非常に複雑で、
適切な対応が必要です。

当事務所では、経営者・事業責任者限定で、
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最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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