適用除外と適用猶予の違い~わかりやすく説明します!

社会保険労務士が専門にしている
労働法は、民法などと比べると
頻繁に法律が改正されます。

その際に、改正された法律を読むと
適用猶予とか適用除外という言葉が出てきます。

この適用猶予と、適用除外の違いはご存じでしょうか?

法律に詳しい方からは「そんなのわかってるよ」
と言われそうですが、

とても重要な話ですので
この違いについて話させていただきます。

適用猶予とは

「改正された法律の適用を猶予します」ということですので、

正確な表現ではありませんが、わかりやすく言うと

「法律を適用する期日を延ばしてあげます」という意味です。

大抵は法律に「〜まで」とか「当面の間」などと書いてあり、
それまでは猶予しますという意味です。

「改正された法律を適用するのを待ってあげます」
と言うとわかりやすいでしょうか?

「今回の法改正は適用されません」
という適用除外とは全く違うのです。

適用を待ってくれているだけであって
適用しない(除外する)わけではないのです。

したがって、「適用をするのを待ちますから、
その間になんとかしてくださいね」という意味なのです。

例えば、「100人未満の会社に今すぐ適用
するのは厳しいので適用を猶予します」
という形が多いのです。

したがって、その適用を猶予してくれている間に
対策を講じないといけません。

そういう意味なのです。

正確な表現とは少し違いますが、
大体の意味は伝わったでしょうか?

法律の用語は独特ですよね。

法律用語は一文字違えば
意味が違います。

もし、適用猶予と適用除外を混同していたら
どのようなことになるでしょうか?

適用除外になっているにもかかわらず
「どうせ、猶予期間があるだけでしょ。
先取りして導入しよう」ということが起こりえます。

もちろん、それが悪いわけではありません。
素晴らしいことです。

しかし、きちんと内容を理解したうえで行うのと
内容を理解しないまま行うのでは全く意味が違ってきます。

逆のパターンもあります。

適用猶予になっているだけにもかかわらず
「うちには関係ない」と思っていたら
どうなるでしょうか?

なぜ、「しばらく待ってあげます」
と法律でわざわざ言うのかを考えてみて下さい。

「この業種やこの規模の会社に、
法律を今いきなり適用したら大変だろう」

そう国が考えたから適用を
猶予してくれているのです。

中小企業に今すぐ導入できると国が考えているなら、
「法律の適用を待ってあげます」という猶予期間
を設けるはずがありませんよね?

準備期間を設けているのに
その期間に準備していなかったら
大変なことになります。

特に、労働時間や賃金に関することは
適用を猶予してくれている間に
対策を講じてください。

何となくわかった気になる
というのはとても危険です。

法律は、単語が一つ違うだけで全く違うのです。

なお、労働法は民法などの法律と違い頻繁に改正される理由ですが、

究極的には個人と個人の利害の調整(比較衡量)
を立法趣旨とする民法に対して、

労働法は、社会の時代に合わせて内容も変えていく
必要があるからです。

適用猶予になっていた法律

最後に、中小企業に適用猶予になっていましたが、
現在、中小企業にも適用になっている法律
をいくつか挙げておきます。

■不合理な待遇差の解消(同一労働同一賃金)
大企業2020年4月1日、中小企業21年4月1日施行

■パワハラ防止法
大企業2020年6月1日、中小企業22年4月1日施行

■月60時間超えの割増賃金5割
大企業2010年4月1日、中小企業23年4月1日施行

中小企業に適用になるまで長い年月がかかったものもありますが、
法律である以上、いつかは必ず適用になります。

それまでに準備をしていくことが必要です。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

執筆者
特定社会保険労務士 小嶋裕司

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