雇用契約書を結んでいない会社が今からでも社員と結ぶためには?
「今まで、雇用契約書を結んでこなかったけど、
今からでも社員と雇用契約書を結びたいのですが、
雇用契約書を結べずに困っています」
このようなご相談を受けることがあります。
労働条件通知書の交付は必要ですが、
雇用契約書の締結は法的義務ではありませんし、
必ずしも結ぶ必要はないのですが、
最初に、このようなご相談を受けた際には戸惑いました。
「なぜ、結べないのか?」
理由がわからなかったからです。
今回は、そのような悩みを抱えた会社様のために
私なりの回答を書かせていただきます。
雇用契約書を結んでいない理由
お話を伺うと、今まで雇用契約書を結んでこなかった理由
については様々なようです。
そんな深い理由もなく、
気が付いたら雇用契約書を結んでこなかった
という会社がほとんどです。
例えば、以下のような理由ですね。
「知り合いを通じて社員を雇用してきたから」
「忙しく雇用契約書を結ぶこともなく、
すぐに働いてもらったけれどそのまま何年も経過した。」
今まで、雇用契約書を交わすことなく済んでいる企業は、
今まで社員の皆さんとトラブルが生じなかったということだと思います。
そもそも、雇用契約書の締結は必要なのか?
結論から申しあげると労働基準法では
雇用契約書の締結は求められておりません。
労基法によって求められているのは
労働条件を明示することです。
労働基準法15条に定めがあります。
まずは、以下の労基法15条をご覧ください。
(労働条件の明示)第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
何を明示しなければならないかについてですが、
絶対に明示しなければならない事項が決まっています。
そして、そのうちの昇給以外は書面で
明示しなければならないとされています。
ただし、労働者が希望した場合は、
FAXやメール等での明示でもかまわないことになりました。
それでも、書面にできるものでなければなりません。
つまり、雇用契約書を交わすことが法律上の義務なのではなく、
労働条件を明示することが義務なのです。
この書面を「労働条件通知書」と言います。
労働条件通知書と雇用契約書の違いの詳細は
以下の記事をお読みください。
労働条件通知書を交付する目的~労働条件通知書は仕方なく交付するものではありません
しかし、法的な義務であるかどうかは関係なく、
雇用契約書を結ぶことは非常に大きな意味を持ちます。
社員に権利だけでなく義務も明示できるからです。
雇用契約書を交わしてこなかった場合の対応方法
冒頭にある通り、当事務所にご相談にお越しになる企業の中には、
「今まで何年も雇用契約書を交わしてこなかった社員がいるけど、
今からでもきちんと交わしたい」いう会社様は多いです。
「しかし、入社して何年もたった社員と、
雇用契約書を交わすのは不自然で困っている」
そのように皆様が口を揃えて仰います。
つまり、「社員の皆さんになんて言って良いのかわからない」というのです。
それが、雇用契約書を結べない理由のようです。
確かに、入社して何年も経過してから雇用契約書を結ぶ
というのは不自然ですね。
専門家に相談した方もたくさんいらっしゃいますが、
「社員ときちんとお話をしてはどうでしょう?」
としかアドバイスをもらえず、
「どうしてよいかわからない」とのことです。
今からでも、雇用契約書を結びたいと思っているのに、
そのようなアドバイスでは悲しくなりますね。
しかし、実は、この問題は、簡単な方法で解決できます。
その方法とは、「名称を変える(工夫する)」だけです。
雇用契約書(〇〇〇〇△△書)
雇用契約書という名称が不自然なら
不自然でない名前にすればよいだけです。
雇用契約書という名称の後に
「かっこ書き」で自然な名称を示しましょう。
大切なのは社員の皆さんの権利と義務を明確にすることであって、
名称は問題ではないのです。
たった、これだけのことで当事務所にご相談にいらした
会社様の問題は解決しています。
御社でしっくりとくる名称を探してください。
雇用契約書の正しい整備は、トラブルを未然に防ぐ第一歩です
さらに詳しいアドバイスや具体的な対応方法を知りたい企業様は、
当事務所の顧問ページをご覧ください。
正しく就業規則や雇用契約書の整備をすることで
ほとんどの労務問題には対応できるようになります。
社会保険労務士と労務顧問契約を結ぶ前に検討すべきこと(雇用契約書を整備しましょう)
最後まで、お読みただき、
ありがとうございました。
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