歩合給にも割増賃金の支払いが必要ですが、計算方法が違います
歩合給は「出来高払い制その他の請負制 によって
定められている賃金」に該当します。
歩合給(出来高払い制)などを会社として
導入している会社は多いと思いますが、
歩合給に対しても残業代の支払いが必要です。
歩合給の割増賃金の計算方法
しかし、その割増賃金の計算方法は
通常の賃金の計算方法とは違います。
歩合給の場合は通常の計算方法と異なり
割増賃金が圧倒的に少なくなります。
その計算方法を正確にご存じの方は
非常に少ないので解説させていただきます。
歩合給の割増賃金の計算方法が違う
というのは「必ず」覚えておいてください。
歩合給の割増賃金の計算方法は以下のような扱いになります。
まずは、ご覧ください。
「賃金が出来高払い制その他の請負制(歩合給)によって定められている労働者に関しては、時間外労働があった場合でも、通常賃金部分(100%)は既に支払われているため、100%部分の賃金の支払いは不要である。」平成11年3月31日基発168号
つまり、出来高払い制その他の請負制(歩合給)によって
定められている賃金ということになれば、
時間外労働をした場合の時給部分である
「1」の支払いが不要になります。
割増賃金として0.25の支払いのみで
かまわないということです。
しかも、出来高払い制その他の請負制(歩合給)
によって定められている賃金については、
「賃金計算期間において、出来高払い制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、
当該賃金算定期間における総労働時間で除した金額に…」
となっています。
つまり、割増賃金を計算する際に、会社の所定労働時間で割るのではなく
総労働時間で割ることになっています。
例えば、会社の所定労働時間が160時間で、
その従業員の残業時間が60時間だった場合には、
160時間ではなく220時間で「出来高払い給」を割って
時間外労働の割増賃金を計算するということです。
支払わないといけない割増賃金の額は通常の賃金に比べて僅少です。
【事例】全額基本給と全額歩合給で30万円が支払われた場合の違い
これだけだとイメージがつかないと思いますので、
実際の金額で計算してみましょう。
ある会社のAさんの賃金30万円が
➀全額基本給で支払われた場合と、➁全額歩合給(完全歩合給)で支払われた場合で
どれぐらい割増賃金額(賃金総額)が違うのかを計算してみます。
なお、以下を前提に考えます。
1か月の平均(及び当月の)所定労働時間:160時間
今月のAさんの残業時間:60時間で計算
※ また、この会社では160時間を
超えたところから法定時間外割増賃金(1.25)を支払っています。
➀全額基本給で30万円支払われた場合
{基本給(30万)÷1か月平均所定労働時間(160時間)} ×(1.25)×時間外労働時間数(60時間)
=(割増賃金の月額)14万625円
賃金総額 基本給30万+14万625円 = 44万625円
➁全額歩合給(完全歩合給)で30万円支払われた場合
{歩合給(30万)÷1か月の総労働時間(160+60時間)} ×0.25×時間外労働時間数(60時間)
=(割増賃金の月額)2万455円
賃金総額 歩合給30万+2万455円 = 32万455円
いかがでしょうか?
賃金総額が12万円以上違ってきます。
歩合給の割増賃金の計算方法が他の賃金と違う理由
なぜ、このような計算方法になっているのかというと、
出来高払い制その他の請負制(歩合給)
によって定められている賃金は
仕事の成果に対して支払われるものだからです。
賃金が歩合給で支払われている労働者は
時間外労働があった場合にも、
通常の賃金部分(100%の部分)は
既に(歩合給という)賃金として支払われているために、
100%の部分についての支払いは不要
だということです。
したがって、0.25の割増部分のみの支払いで良くなりますし、
220時間で割れば良いということになります。
年俸制のように成果主義賃金として
まったく意味をなさない制度とは違い、
成果主義賃金の一つの形態です。
年俸制で残業代を含む契約を結んだとしても
あとから社員が残業代を請求してきた場合には
支払わないといけません。
社員が同意してくれても法的に無効になります。
それに対して歩合給は成果主義的賃金として
とても有効な制度の一つです。
歩合の設定の仕方は「自分でとってきた仕事の何%」
という以外にもいろいろ考えられますので
会社にピッタリの歩合の設定を考えましょう。
本ブログの内容も前提知識であって
本当に大切なのはこの歩合の設定です。
年俸制が成果主義賃金としてまったく意味をなさないというのは
↓↓↓以下の記事で書いています。
年俸制にまつわる疑問(残業代の支払い、メリット、想定した社員)
この記事をお読みの方の中には
いらっしゃらないとは思いますが、
万一、年俸制にすれば残業代の支払いが不要になる
とお考えの方は他の制度に移行するなり
今すぐに対応をとってください。
そして、歩合給の導入は就業規則作成(賃金規程作成)し、
そこへ記載しておくことが必要なのは言うまでもありません。
就業規則の絶対的必要記載事項ですので、
記載してください。
ただ、「なぜ、歩合給で支払った場合と基本給で支払った場合で、
これほどの額の違いが認められるのか?」について、
本ブログの簡単なご説明では釈然としない方も多いと思われます。
その場合、以下のブログで歩合給の本質を掘り下げて書いていますのでお読み下さい。
【歩合給 残業代の本質】なぜ、歩合給には割増賃金が少なくて良いのか?~通常の賃金と計算方法が違う理由
完全歩合の違法性について
完全歩合を違法だと思っている方が多いようですが、
そのようなことはありません。
ただし、条件があります。
以下の記事で完全歩合について書いています。
完全歩合給って違法ですか?
歩合給無料相談をご利用ください ⁻1日限定で、時間制限はなし
歩合給に関しては法律どころか、判例や通達も少なく
判断に悩むところではないでしょうか?
ただ、仕組みはわかっても歩合給は精通した専門家も少なく、
誰に相談したら良いかわからないという方も多いようです。
当事務所では歩合給の無料相談も行っています。
ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。
以下のページをクリックして詳細をご確認ください。
賃金・残業代等の人件費は月3社限定
1日限定で時間は無制限ですが、
お受けいただける方には条件があります。
詳細は以下のリンクからご確認ください。
残業代を中心に解決したい会社はこちら
残業代無料相談(1日限定で、時間無制限で行っています)
賃金の問題をトータルに解決したい会社はこちら
賃金制度 無料相談(同じく1日限定で、時間無制限です)
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
その他の関連記事
賃金規程の良い雛形・規定例を探しても見つからない理由
保険代理店の直接雇用