完全歩合給って違法ですか? ~労働基準法27条の解釈
歩合給は割増賃金の支払い額が
通常の賃金よりも少なくすみます。
通常の成果給ですと割増賃金の支払いが必要ですが、
歩合給はそれが圧倒的に少なくて済みます。
詳しくは以下の記事をお読み下さい。
歩合給にも割増賃金の支払いが必要ですが、計算方法が違います。
この制度は、導入したいと思っても
導入になじまない業種や業務があります。
総務部の方などは導入しずらいですよね。
導入しやすい職種・業務であれば
導入を検討してはいかがでしょうか?
今回は、歩合給の中でも誤解の多い、
完全歩合給についてお話をさせていただきます。
完全歩合が認められないケースとその理由
完全歩合給とは、
賃金の一部を歩合で支払うのと違い
全ての賃金を歩合で支払うことをいいます。
「これって、違法だと聞いたんですけど・・
本当に、違法なんですか?」
そのようなご質問をいただくことがあります。
「賃金を労働時間で決めるのではなく、
歩合(成果)で賃金を決める制度なんて許されるわけがない!」
と思われる方が多いのでしょう。
しかし、結論から言いますと、
完全歩合給自体は違法ではありません。
しかし、もし、出来高がなければ賃金を一切支払わない
という意味であれば違法です。
認められません。
出来高がなければ賃金を支払わないという完全歩合が認められない理由
なぜ、認められないかというと
労働基準法27条に(出来高払い制の保障給)
という条文があるからです。
労働基準法27条(出来高払い制の保障給)
「出来高払い制その他の請負制で使用する労働者については、
使用者は、労働時間に応じ、一定額の賃金の保障をしなければならない。」
労働時間に応じ一定額の保障が求められているので、
出来高がゼロであれば賃金を一切支払わない
というのは認められないのです。
したがって、完全歩合給という賃金構成自体は
違法とはいえませんが、
保障給の制度を設けて就業規則(賃金規程)
に記載することは必要です。
そして、保障給に満たなければ支払っていく必要があります。
出来高払い制で保障しなければならない金額は?
労働基準法27条で要件が定められています。
「1.労働時間に応じ」「2.一定額」となっています。
分けて解説します。
1.労働時間に応じ
労働時間に応じて一定額なので、
「一か月いくら」では労働時間に応じて
支払ったことにはなりません。
なお、「月額で保障給を設けている会社をみたことがあるのですが?」
というご質問を受けることがあります。
その話を詳しく解説すると
非常に難しい内容になりますが、
今回の記事でお伝えしたいことから
大きく外れますので省略します。
2.一定額
保証給の額(2.一定額)についてですが、
一定額とはいくらなら許されるのか?
という話になりますよね。
少なくても平均賃金の6割程度を保証すれば
本条の規定に違反することにはならないとされています。
なお、保障給は、保障する額は労働時間に応じた一定の額ですが、
現実の支払いは出来高の減少した場合に出来高給と保証給との差額
について行うものです。
したがって、当然出来高が通常の状態にある場合には支払う必要はありません。
あと、もう一つ大切なことがあります。
最低賃金法を下回ってはいけません!
言うまでもないことですが、
最低賃金法という法律がありますので、
保障給の額は最低賃金に触れてはいけません。
歩合給とは、従業員に対して支払う賃金のことであって
業務委託契約とは違うのです。
歩合給を適正に導入するために
歩合給については成果主義的賃金として
とても有効な制度ですが、
きちんと導入しようとすると
歩合給は難しい問題が生じます。
中途半端に導入し
賃金未払い(労働基準法24条違反)
に問われては大変です。
誤った導入をすると、
大変な未払い賃金の額になるはずです。
歩合給は割増賃金が非常に少なくて済む賃金ですが、
通常の計算方法での支払いを命じられたら大変な額の違いになります。
きちんと法的手続に則って
導入するようにしてください。
賃金規程も慎重に作成してください。
ただ、現状、歩合給は詳しい専門家も
少ない分野です。
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最後まで、お読みいただきありがとうございました。