労働基準法に違反する労働者の同意は違法(無効)なのか?

多くの経営者・実務の担当者と話をしていて、
とても大切なのに意外に誤解してらっしゃることがあります。

就業規則・雇用契約書に記載する内容には、
・労働者の同意を得ても無効なことと
・労働者が同意してくれれば有効なこと
この2種類があります。

この両者の区別をつけられるでしょうか?

労働基準法を初めとした労働法には
労働者が同意しても無効なことが主に書いてあります。

労働者が同意しても(許しても)
国が許さん!

そんな感じの法律です。

したがって、労基法等に違反する内容を
就業規則や雇用契約書に記載しても無効です。

労働者の同意を得れば有効な事例、同意を得ても無効な事例

労働基準法に違反する内容は同意を得ても無効ですが、

逆に言うと、労働法に精通していない方にとって
有効か無効かの判断ができないということになりますね。

例えば、労働者の同意を得ても無効な
わかりやすい例を挙げると残業代です。

「残業代は支払いません」

このような契約は労働者が同意していても無効です。

もちろん、無効になるだけではありません。

残業代を支払わないといけません。

労働基準法37条に違反する契約だからです。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第37条 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

残業代を支払わないと場合によっては
罰則をかされることがあります。

労働基準法に罰則規定があるからです。

その一方、「例えば、基本給30万円のうち
〇万円をあらかじめ残業代として支払う」という契約は
一定の要件を満たせば認められます。

「〇時間分の残業代を支払っていない点では同じではないか?」

そう思われる方が多いようですが、
全く違います。

なぜ、違法ではないのかご説明できるでしょうか?

端的にご説明できない場合、以下の記事をお読みください。

定額残業代に対する大きな誤解 

就業規則・雇用契約書を作成するためには法律の知識が必須です

労働者の同意を得ても
認められないことなのか?

労働者の同意があれば
認められることなのか?

顧問社労士や顧問弁護士がいるのであれば
の都度質問をすればよいでしょうが、

そうでないのであれば、
自社できちんと区別できるようにすることが必要です。

まず、労基法を初めとした法律を知ることから始めてください。

たまに、「就業規則は社会保険労務士の専門業務か?」
という議論がなされることがありますが、

労働法を専門としている弁護士の先生か
社会保険労務士でもない限り、

就業規則を作成するのは
困難だと思います。

毎年のように法律が変わるのですから、
労働法に精通するのは容易ではありません。

最後になりますが、

いつもブログを書いていて思うことですが、
法律って難しいですよね。

今回の内容は、わかりやすさを優先するために
多少正確性を欠いた表現になっている部分もあります。

その点はご了解ください。

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