皆勤手当の廃止はもったいない~「皆勤手当は時代遅れ」?!

皆勤手当(精勤手当と呼ぶ会社様もあります。)
を廃止する会社が増えているようです。

「年次有給休暇を取得した際に、
皆勤手当を支給しないことは違法だとされるなら、
皆勤手当を支給する意味がない」という理由のようです。

皆勤手当を廃止してどのような賃金制度にするか
の明確な企業戦略があるのなら別ですが、

そうでないのなら皆勤手当の廃止は慎重に検討していただきたいのです。

本記事では、皆勤手当が持つ重要な役割と、
それを効果的に活用する方法について解説します。

年次有給休暇の問題を踏まえつつ、
なぜ皆勤手当が依然として有効な手段であるかを明らかにしていきます。

年休を取得した際、皆勤手当を支給しないことは違法か?

社員が年次有給休暇を取得した場合に、
皆勤手当を支給しない(減額する)ことが違法か否か?についてです。

これの問題については、行政通達があります。

少し長いですが、
アンダーラインの部分に注目してください。

 精皆勤手当や賞与の額の算定に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取り扱いをしないようにしなければならないものであること。
年次有給休暇の取得に伴う不利益な取り扱いについては、従来、➀年休の取得を抑制する効果をもち、法第39条の精神に反するものであり、➁精皆勤手当や賞与の減額等の程度によっては、公序良俗に反するものとして民事上無効と解される場合もあると考えられる見地に立って、不利益な取扱いに対する是正指導を行ってきたところであるが、今後は、労働基準法上に明定されたことを受けて、上記趣旨を更に徹底させるよう指導を行うものとすること(S63・1・1日 基発1号)

アンダーライン(特に太字の部分)の通り、
労働基準監督署の是正指導の対象になります。

社員が年休を取得した場合に、
皆勤手当を支給しない(減額する)ということは問題があります。

皆勤手当の有効活用について

しかし、年次有給休暇を取得した場合に、
皆勤手当を支給しないことが違法だとしても、
皆勤手当を支給すること自体に意味がないわけではありません。

皆勤手当を廃止した後の明確な方針があれば別ですが、
そうでないのであれば、

皆勤手当の廃止はもったいないです。

その理由についてお話をします。

無断欠勤・遅刻対策

まず、社員が無断欠勤をした場合には、
皆勤手当を支給しないのは全く問題ありませんので、

皆勤手当は無断欠勤対策として意味があります。

※ なお、年次有給休暇は事前申請が前提ですから、
無断欠勤のときに年休は取得できません。

そのような就業規則になっていないのなら、
整備する必要があります。

次に、皆勤手当は遅刻対策としても効果があります。

もし、御社に皆勤手当があり、
それが遅刻対策になっていないのだとすれば、
規定(賃金規程及び雇用契約書への)の仕方が良くないのだと思います。

規定の仕方を工夫すれば従業員の遅刻を
減らすこともできます。

減給の制裁(労働基準法91条)と皆勤手当の関係

また、「無断欠勤や遅刻は罰として減給をしたい」
と仰る経営者の方は多いです。

しかし、懲戒処分として行うには減額に限界があります。

ご存じのように減給の制裁を加えるには
上限額というのが労働基準法91条で決まっているからです。

労働基準法91条
1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはいけない

このようになっています。

ちなみに、平均賃金とは、1日の賃金とは違います。

平均賃金の定義は労働基準法12条にあります。

労働基準法第12条
第1項 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。

平均賃金を計算する際は、
3か月の労働日数で割るのではなく暦日数で割ります。

減給の制裁はその半額が限界です。

仮に、平均賃金が8000円の従業員の方なら
4000円が限度ということになりますね。

しかも、一賃金支払い期における賃金の総額
の10分の1を超えてはいけません。

無遅刻・無欠席の社員を大切にしたいという会社は多いですが、
減給の制裁には限界があります。

それなら、皆勤手当を活用しては
いかがでしょうか?

1万円の皆勤手当を支給することにしていた場合、
1回の無断欠勤で1万円を支給しなくなったとしても
この労働基準法91条違反には該当しません。

皆勤手当とはそのような趣旨で
支給するものです。

規定の仕方には工夫が必要ですが、
遅刻に関しても同様です。

これから皆勤手当を設けるのであれば
話は変わってきますが、

現在、存在しているのであれば、
有効活用することを考えてみてはいかがでしょうか?

手当を支給する意義

私は手当を支給するということは
会社の姿勢(考え方)を示す意味においても
有効なものだと思っています。

お給料は毎月振り込まれるものです。
給与明細だって毎月見ます。

給与明細は毎月強く意識するものです。

手当をみれば、会社が大切にしていることがわかります。

そこに、無遅刻・無欠席により支給される
皆勤手当の項目があるということは
会社が無遅刻無欠席の社員を大切にしたい
という強い意思が明確に示されていると思われます。

基本給のみの項目ではそれが伝わりません。

賃金の課題を解決しようとすると
同社員を評価するかという評価制度をつくろうという会社様が多いですが、
手当を有効に活用することから考えてみてはいかがでしょうか?

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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