1か月単位の変形労働制と就業規則の関係

残業削減に効果を発揮する変形労働時間制には、
主に1年単位の変形労働時間制と
1か月単位変形労働時間制があります。

(1週間単位というものもありますが、
採用している企業は極めて少ないので省略します。)

変形労働時間制については以下の記事をお読みください。
変形労働時間制とは何ですか?~1か月単位と1年単位

1年単位の変形労働時間制を導入するには
従業員の過半数を代表する者との書面による協定(労使協定)
が必要となっています。

労働基準法 第32条の4に1年単位の変形労働時間制の条文があります。

(1年単位の変形労働時間制)労働基準法 第32条の4
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第32条の規定にかかわらず、その協定で第2号の対象期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第1項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。

労使協定が曖昧な方は以下の記事をお読みください。
労使協定とは何か~就業規則との違いをご説明できますか?

一方、1か月単位の変形労働時間制は
就業規則で導入が可能となっています。
労働基準法 第32条の2に条文があります。

(1か月単位の変形労働時間制)労働基準法 第32条の2
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。

条文のアンダーラインが就業規則で導入可能
であることを示しています。

これは、どういうことでしょうか?

法律で違いが決められている以上、
それには意味があります。

労使協定は従業員の代表者と
話し合って協定します。

しかし、就業規則は会社が作成するものです。

従業員と話し合って作成することまで
要求されるものではありません。

つまり、1か月単位の変形労働時間制は
会社が決定して導入ができるということを
意味しています。

なぜ、1か月単位の変形労働時間制は
会社が導入を決めることができるのでしょうか?

なぜ、1年単位の変形労働時間制と1ヶ月単位の変形労働時間制
で違いがあるのでしょうか?

法律で違いを設けている以上、
そこには理由があります。

制度の趣旨というものです。

制度を導入する際には従業員の方に
『導入の理由』をご説明することになるはずです。

こういった制度の趣旨を社員に説明できる
ことは非常に重要です。

この制度は、1カ月を平均して週40時間以内に収まっていれば
仮に、特定の日に8時間を超えても時間外割増賃金の支払いが不要
になるというものですから、

今まで支払われていた割増賃金が支払われない日も
出てくる可能性があるということです。

きちんとご説明できないとどうなるでしょう?

「何かやましいことがあるのではないか?」
と思われてしまいかねません。

なぜ、1年単位の変形労働時間制と
1ヶ月単位の変形労働時間制で違いがあるのか?

1ヶ月単位の変形労働時間制は就業規則で導入できると
わざわざ違いを設けてあるのか?

少し考えてみてください。

それが社員の方にご説明する際に重要になります。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

なぜ、違法な変形労働時間制の運用(計算)が行われる?
変形労働時間制とは何ですか?~1か月単位と1年単位
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