変形労働時間制とは何ですか?~1か月単位と1年単位

変形労働時間制は私の事務所では
特にご依頼の多い制度です。

どのような制度かご存じのない方
のために解説をさせていただきます。

従業員数の少ない会社様で、この制度をご存じない場合は、
ぜひ、知っておいていただきたい制度の一つです。

残業削減に効果があります。

したがって、残業代の問題にも超有効です。

変形労働時間制の概要

変形労働時間制をできるだけ簡単にご説明します。

ご存じのように日本には法定労働時間
というものがありますよね。

基本的に1日8時間、週40時間ですね。
(40時間ではない場合もありますが、
話が複雑になりますので省略します。)

これを超えると1.25で計算した
時間外割増賃金を支払わないといけません。

例えば、ある日に1日9時間働かせた場合には、
仮に週40時間を超えていなくても
1時間分の時間外割増賃金の支払いが必要です。

逆に、1日7時間を週に6日働かせた場合、
1日は8時間未満ですが、
週は42時間ですので2時間分の
時間外割増賃金が必要です。

これを法定労働時間といいますよね。

しかし、労働基準法で一定期間を平均して
40時間以内おさまっていれば

特定の日や週が8時間、40時間を
超えていてもよい(時間外割増賃金の支払いは不要)
という制度がみとられています。

1.25で計算した時間外割増賃金の支払いは不要ということです

これを変形労働時間制といいます。

1か月単位、1年単位、1週間単位の変形労働時間制

これには、1か月を平均して40時間におさまっていれば良い
という1か月単位の変形労働時間制

1年を平均して40時間におさまっていればよい
という1年単位の変形労働時間制などがあります。

1か月単位の変形労働時間制について

1か月単位の変形労働時間制の条文は労働基準法 第32条の2にあります。

労働基準法 第32条の2
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。

1か月単位の変形労働時間制については以下の記事をお読みください。

1か月単位の変形労働制と就業規則の関係

1年単位の変形労働時間制について

1年単位の変形同道時間制の条文は労働基準法32条の4にあります。

第三十二条の四 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第三十二条の規定にかかわらず、その協定で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

一 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
二 対象期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月を超え一年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
三 特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。第三項において同じ。)
四 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を一箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)
五 その他厚生労働省令で定める事項
② 使用者は、前項の協定で同項第四号の区分をし当該区分による各期間のうち最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間を定めたときは、当該各期間の初日の少なくとも三十日前に、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得て、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働日数を超えない範囲内において当該各期間における労働日及び当該総労働時間を超えない範囲内において当該各期間における労働日ごとの労働時間を定めなければならない。
③ 厚生労働大臣は、労働政策審議会の意見を聴いて、厚生労働省令で、対象期間における労働日数の限度並びに一日及び一週間の労働時間の限度並びに対象期間(第一項の協定で特定期間として定められた期間を除く。)及び同項の協定で特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度を定めることができる。
④ 第三十二条の二第二項の規定は、第一項の協定について準用する。

非常に長い条文ですね。
それは、この制度が法律上の規制
が大きいということです。

1年単位の変形労働時間制については
以下の記事をお読みください。
1年単位の変形労働時間制のメリットとデメリット~就業規則との関係・週休二日制困難な会社

1週間単位の非定型的変形労働時間制について

1週間単位の非定型的変形労働時間制というものもありますが
導入企業が圧倒的に少ないです。

導入企業が少ないこともあって
この制度は別記事にして書いておりません。
そこで、ここで解説します。

ただ、制度の導入を検討していないなら
軽くお読みいただければよいと思います。

1.1週間単位の非定型的変形労働時間制の導入要件・効果

以下の条文(労働基準法32条の5)をご覧ください。

労働基準法 第32条の5
1.使用者は、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であって、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のものに従事する労働者については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、第32条第2項の規定にかかわらず、1日について10時間まで労働させることができる。
2.使用者は、前項の規定により労働者に労働させる場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働させる1週間の各日の労働時間を、あらかじめ、当該労働者に通知しなければならない。
3.第32条の2第2項の規定は、第1項の協定について準用する。

条文をわかりやすく整理すると以下のようになります。

➀事業の業種が小売業、旅館、料理店及び飲食店のいずれかに該当すること
➁事業の規模が常時30人(厚生労働省令で定める数)未満の労働者を使用するであること
➂労使協定を締結すること

上記の条件を満たした場合、1日の上限を10時間、週40時間を超えない範囲内において、
事前に通知することで、その通知した所定労働時間で労働させることができます。

事前に通知した時間が10時間時間だったとしても、
週40時間以内に収まっていれば、8時間を超えた
2時間分の割増賃金が不要ということです。

事前通知の方法は『原則として、当該1週間を開始する前に
その週の各日の労働時間を書面で労働者に通知するもの』とされています
(労働基準法施行規則12条の5)

2.1週間単位の非定型的変形労働時間制の導入企業が少ない理由

次に、なぜ、この制度の導入企業が少ないかについてです。

まずは、業種・規模が限定されている
ということがあげられると思います。

また、事前通知の方法として
「週が開始する前に通知すれば良い」
となっています。

労働者も予定が全く立ちません。
これでは、人材の確保も難しいでしょう。

それにもかかわらず、
「1日の上限を10時間、週40時間を超えない範囲内」
という限定があります。

1か月単位の変形労働時間制には
この限定は当然ありません。

これなら、1か月単位の変形労働時間制の方が
会社としても使いやすいでしょう。

そのような様々な理由から活用されていないのだと思われます。

変形労働時間制導入の際に気を付けること

変形労働時間制は、法律で認められた制度ですので、
様々な条件があります。

これをクリアしていないと違法な変形労働時間制
の運用となります。

導入するのであればきちんとした形で
導入してください。

残業削減のために導入した制度
にもかかわらず、

違法だということになり、
追加で残業代を支払うことになっては
困りますよね。

何のために導入したのか?
ということになります。

きちんととした運用が必要です。

そして、この変形労働時間制で
私が最も大切だと思うのはシフトの組み方
(又はカレンダーの作り方)です。

この作り方次第で残業(残業代)削減の結果
が大きく変わってくるからです。

制度は調べれば勉強できますし、
わからなければ調べれば良いです。

しかし、このようなシフトの組み方などの知恵は
残念ながら学べる場所はありません。

法律の仕組みを覚えただけでは
制度の半分しか活用できていないと言えます。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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