懲戒解雇と普通解雇の違い ~就業規則に記載のない事由での解雇はできない?
両方とも会社からの一方的な労働契約の解消ですが、
違いは何でしょうか?
普通解雇=契約不履行による労働契約の解消
懲戒解雇=懲戒(罰)としての労働契約の解消
以前は、懲戒解雇は就業規則に記載のない
事由ではできない(=限定列挙)が、
普通解雇は就業規則に記載のある事由に
必ずしも限られない(=例示列挙)
と言われてきました。
しかし、最近は、解雇をするには就業規則に
解雇事由の記載のあることが前提になってきています。
つまり、できる限り解雇の事由(どのようなときに解雇されるか)
は列挙しておく必要があります。
抽象的な解説では分かりずらいと思いますので、
問題のある就業規則の条文を一緒に来ていきましょう。
まずは、以下の条文をご覧ください。
第〇条(解雇)
会社は従業員が次の各号に該当するときは、30日前に予告するか、
または労働基準法第12条に規定する平均賃金の30日分を支給してその者を解雇する。ただし、試用期間中の者で入社後14日を経てないもの及び日雇の者で1ヶ月を超え引き続き使用されない者には、平均賃金30日分を支給せず、即時解雇とする。
1.勤務態度が著しく不良な場合
2.業務に耐えられないと認めた場合
3.やむをえない業務の都合による場合
さて、この解雇の条文のどこが問題でしょうか?
まず、「勤務態度が著しく不良」となっていますが、
「勤務成績」や「勤務能力」がありませんよね。
勤務成績等は一切考慮しなくてよいのでしょうか?
それでは困るはずです。
次に、「3.やむをえない業務の都合による場合」
となっていますが、
おそらく、整理解雇のことを
指しているのだと思いますが、
そうであれば、きちんと整理解雇として
規定を整備すべきです。
また、重大な懲戒事由に
該当したときなどもありません。
就業規則に記載があるからといって、
それを理由とした解雇が有効とは限りません
解雇が認められるハードルは高いです。
言うまでもありませんね。
しかし、就業規則に記載のない事由での解雇は
原則としてできないと考えた場合、
もう少し丁寧に規定していくべきです。
なお、解雇が有効かどうかは基本的
に民事での争いになりますが、
法律で解雇が禁止されている場合がありますので、
この点はご注意ください。
解雇制限が代表的な例ですね。
■労働基準法19条(解雇制限)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間
及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間
及びその後30日間は、解雇してはならない。
労働基準法では、他にも、
以下のような解雇が禁止されています。
・従業員の国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇
・従業員が監督機関に申告したことを理由とする解雇
労働基準法以外にも、
男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、
パートタイム労働法、労働組合法、個別労働紛争解決促進法などにも
解雇の禁止が定められている場合があります。
これらの場合は、法律で禁止されているので、
当事者の間で争う話ではありません。
当事者が許しても国家が許さない!
言葉は強いですが、
そのようなものになります。
ここをごちゃごちゃにしている方
がいらっしゃいますので、
間違えないようにしてください。
最後まで、お読みいただき狩りが当ございました。
関連記事
解雇と辞職と退職勧奨等の違いを端的に言えますか?~就業規則への記載
懲戒処分をできない就業規則 ~実際の就業規則を見ながら解説します
退職時のトラブルを避けるために1番大切なこと~退職届をもらうことに尽きます